マインドフルネスとは「今ここに起こる体験を、評価判断せずに、観察すること」です。
これは座って瞑想している時だけではなく、日常生活の中でも実践できます。
その中で特にコミュニケーションで実践されるマインドフルネスに「マインドフルリスニング」というものがあります。
会話の中で相手の話しに、自分の評価判断を加えず、素直に耳を傾けることで、話の内容や相手の立場を深く理解できるようになります。
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マインドフルリスニングとは?
冒頭でも軽く解説しましたが、マインドフルリスニングとは、以下のように意味になります。
うわの空にならず、評価や判断を加えずに、そのまま相手の話を聴く
別名、傾聴と呼ばれることもあります。
私たちは、聞きながらいろいろなことを考えています。たとえば、
- この話は賛成できないな
- この話の結論はどうなるのだろうか
- この話が終わったら、何と答えようか
など、話しの最中に雑念が浮かんでしまうと、相手の話が100%入ってきません。
相手の話に興味がないと、
- 今日の晩御飯何しよう
- 早く帰りたいな
- 明日のプレゼンはどうしよう
など、うわの空で聞いてしまっていることもあるかもしれません。
相手の話しに全ての注意を向けて、
この人は、
- 今のこういう表情で、
- こういう声のトーンで、
- こういう考え方を持っている
という事実をありのままに受け止めていくのです。
聞くと聴くの違い
マインドフルリスニングを理解する上では、「聞く」と「聴く」の違いを知ることが大切です。
それぞれ以下のような意味になります。
・聞く
⇒耳で音を聞くことすべて含まれる。ぼんやりと聞くなども該当する。
・聴く
⇒積極的に耳を傾ける。深く理解しようとする。
このうち、積極的に耳を傾ける「聴く」の方がマインドフル・リスニングになります。
マインドフル・リスニングでは、
- 耳
- 目
- 心
を使って注意を向けて、傾聴する方法です。
自分の注意のすべてを、相手が話していることに向けることで、
話の内容だけでなく、相手の気持ちや意図、立場など、様々な状況が伝わってきます。
先入観・思い込みが正しい理解を妨げる
マインドフルリスニングは、視野を広げるためにとても大切な技術です。
私たちは誰しも、先入観や思い込みによって、現実をゆがめて物事を認識してしまいます。
その先入観や思いこみで話しを聴いてしまうと、
- これが正しい
- これは間違っている
という対立構造が生まれてしまいます。
何かを支持することで、その反対の考え方や物の見方を受け入れられなくなってしまうのです。
何かの支持者にならず、今ここにある相手の話しをただオープンに聴くことが大切です。
主観的な話しに注意しよう
自分がもともと持っている先入観に支配されないことも重要ですが、相手の話を傾聴することで、新しい先入観を作らないように注意しましょう。
そのためには、相手の話が個人の感想を話しているのか、根拠や理論に基づいて話しているのか確認することが大切です。
何が事実はわからないような賛否両論ある話しは、派閥を作る性質があります。
これに影響されると、「ありのままに物事を観る力」が損なわれてしまうのです。
例えば、
「私にとってマインドフルネスはとても効果があった」
という話しを聞いた時に、相手の気持ちは受け止めつつ、事実については保留にします。
相手は効果があったと思っていも、本当は別の影響かもしれないですし、そこはわからないのです。「ただ相手がマインドフルネスは効果があったと思っている」という感想だけを評価判断せずに、受け止めていきます。
一方で、ある程度根拠があり、理性的な話しであれば、その情報を受け取ることは問題はありません。
例えば、
「マインドフルネスで自動的に起こる思考や感情に気づき、今ここに注意を戻すことで、脳の理性を司る部位が活性化され、判断力が向上します」
という話しであれば、論理的なので、ある程度信頼してもよいでしょう。
ただどんなに根拠がある話しでも、「これこそ事実だ!」「その通りだ!」などと思わないようにしましょう。
話だけで真実だと決めつけず、最後は自分で確かめるという姿勢が大切です。
信じてはいけない9つの項目
このことは、マインドフルネスの源流である初期仏教でも説かれています[1]。
以下に紹介する経典は、カーラーマ経と呼ばれるで、カーラーマ族の人たちが、師匠たちの教えのうちどれが真理か、またはどれが偽りかわからずに疑念に陥っていた時に、お釈迦様に質問した時ものです。
いざ、カーラーマたちよ、あなたがたは、風説によるなかれ。伝承によるなかれ。憶測によるなかれ。蔵経の与えるところによるなかれ。推論によるなかれ。理趣によるなかれ。行相の審慮によるなかれ。見にもとづく審慮によった信忍によるなかれ。有能な外見によるなかれ。『〔この〕沙門は我々の師だ』という〔理由による〕なかれ。
光明寺経蔵 増支部・三集・大品5 66-19.より引用
現代的に考えると、以下のようになります。
・世の中が行っているからといって信じてはいけない
・伝統・古い言い伝えだからといって信じてはいけない
・憶測・推測で達した結論を信じてはいけない
・経典や本、教科書に書いてあるからといって信じてはいけない
・理論や理屈に合っているからといって信じてはいけない
・人間の物の見方に合っているからといって信じてはいけない
・自分の物の見方に合っているからといって信じてはいけない
・見た目が有能そうだからといって信じてはいけない
・肩書きがすごいから、自分の師匠だからといって信じてはいけない
マインドフルリスニングを実践する時も、このように一見正しそうな情報に影響されないことが大切です。
安易に何かを正しいと判断すると、マインドフルネスの感覚が弱まってしまいます。
マインドフルリスニングの4つのポイント
それでは、前述した内容を踏まえて、具体的なマインドフルリスニングのやり方についてご紹介します。マインドフルリスニングのポイントは以下の4つです。
1.相手の話の腰を折らない
2.注意がそれたら、相手の話に戻す
3.自分の価値観を手放す
4.マインドフルリスニングしようと思わない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.相手の話の腰を折らない
まずは相手が話をしている時に、途中で遮らずに最後まで聴くことが大切です。
この姿勢を保つことで、自分の考えや思いに気づきやすくなります。何かを言いたいと思ったら、そこに評価や判断が生まれている可能性があります。
まずは聴くことに徹する、そのあとで話すようにしましょう。
2.注意がそれたら、相手の話に戻す
相手が話している時に、注意が話からそれたら、それに気づき、また相手の話しに注意を戻していきます。
相手の話しに傾聴しつつも、話しを聴くことで生じる自分の変化にも意識を向けていきます。
3.自分の価値観を手放す
マインドフルリスニングの最中は、自分の価値観は手放すようにしましょう。
価値観を持つことは、自分の方向性を定める上で大切なものですが、相手の価値観とあなたの価値観がマッチしているとは限りません。この場合、前述の通り、対立が生まれてしまいます。
また、マッチしていたとしても、価値観のフィルターから相手の話しを聞くと、現実が自分の観念で歪められてしまい、素直に話しを聞くことができません。
すべての正しさを捨てて、相手の話しをじっーと聴くように努めます。
4.マインドフルリスニングしようと思わない
相手の話しを「あるがままに聴こう」「マインドフルリスニングしよう」と思うとかえって視野が狭くなり、マインドフルリスニングできなくなります。
マインドフルでいる時は○○しようとしたり、何かを変えようと頑張ったりする必要はありません。
ただ、自然と起こっている「今この瞬間の体験」を観察していきます。
感覚としては、映画を観ているようにくつろいだ感じで、何もしていないのに、勝手に現れる事象に気づきの目を向けましょう。
まとめ
マインドフルリスニングとは、相手の話をあるがままに、評価判断をせずに聴く技術です。
しかし、人間の性質上、簡単にできるテクニックではありません。人間の脳は怠けもので、すぐに色々と決めつけてしまいます。
そのため、日々マインドフルネスを実践して、自分の思い込みや先入観を手放すことが大切です。
日常生活では、完全にできなくても問題ないので、できる限り”マインドフル”に相手の話を聴いてみてください。
・マインドフルリスニングとは?
・傾聴の効果
・信じてはいけない9つの項目