回避行動は、自分が不安や恐怖が起こる場面を避けることをいいます。
回避を続けると、「不安や恐怖を克服」できなくなってしまいます。
これは日常生活の様々なところで起きており、
「初対面の人に話しかけられない」
「大学に受かりたいのに勉強が先に進まない」
といった感じで不安や恐怖めんどくささを感じる場面には、その背景に回避行動があると説明することができます。
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回避行動の原因
原因は簡単に言ってしまえば、不安や恐怖めんどくささなどの不快な感情です。
これに立ち向かって行動できないために「回避行動」が起きてしまいます。
不安に負けてしまう原因としては、「未来の自分への思いやり」が低下していることが考えられます。
今の自分と未来の自分のつながりを感じられない
未来に自分への思いやりが持てない原因としては、「今と自分」と「未来の自分」のつながりを感じられないことが挙げられます。
例えば、受験勉強がめんどくて進まない場合、合格できなかった将来の自分を他人事として捉えてしまうのです。
これは心理学では、「自己連続性(Self-Continuity)」と呼ばれています[1]。自己連続性(今と未来の自分がつながっている感覚)が低いと、目の前の誘惑に負けやすくなり、不安や恐怖、めんどくささから回避行動が起きてしまうのです。
一時的な近視眼性(temporal myopia)とは?
また別の用語では、「一時的な近視眼性(temporal myopia)」とも呼ばれています。
将来の自分を「抽象的で別人」のように捉え「感情的なつながりを持たない」ような状況のことを言います。つまり、目の前にある恐怖に集中しすぎて将来の自分が見えなくなってしまいます。
人間は未来のことを考えるのが、本当に下手クソな生き物です。そのため、いくら不安を克服したいと思ってもそれに対して必要な行動をとることが難しいのです。
では、克服できないものと諦めるしかないのか。
もちろんそんなことはなく、「未来を具体的に明確にする」「マインドフルネスを身に着ける」ことで不安を感じつつも行動することができます。
未来の自分を明確にする方法
ではここから、回避行動を和らげるための方法をいくつか解説していきます。
小さいゴールを設定する
将来の自分とのつながりが見えなくなるのは、長期の目標しか立てていないから。例えば、
「人見知りを克服したい」
「テストで80点を取りたい」
「1年でダイエット20㎏痩せる」
などです。しかし、これでは目標が大きすぎて、将来がぼんやりとしてしまいます。
そこで、大きな目標に対する小さなステップを決めて、1段1段クリアしていくことで将来と現在につながりが見えてきます。例えば、
「人見知りを克服したい」
⇒「毎日自分から1回は挨拶をする」
「テストで80点を取りたい」
⇒「毎日最低5時間は勉強する」
「1年でダイエット20㎏痩せる」
⇒「週1回5分間ジョギングする」
といった小さなステップを踏むことで、未来をより明確なものにできます。その結果、不安感が少なくなり、回避癖も和らいでいくのです。
ちなみに小さなゴールを作ることで先延ばしを克服することができた!という研究結果[1]も出ています。
反応妨害
反応妨害とは、
- 回避行動ができない状況や環境を作って、
不安に向かっていく方法です。
前途の通り不安を克服するには、逃げずに向き合わないといけないわけですが、その際に必ず何らかの回避行動をとりたくなります。そこで、予測される回避行動をリストアップして、あらかじめそれができないようにしてから不安に向き合おう!という方法です。…かなりの荒療治ですね。
例えば、令和の虎で有名な美容外科医の細井龍さんは、受験勉強のときにイスに自分の身体を縛り付けて勉強していたそう。このようにやらざる負えない環境を作ることで、未来が明確になり、行動できる可能性も高まっていきます。
プランBを用意する
プランBも反応妨害と似ていますが、あらかじめリスクを推測して、対策を練っておく方法です。
例えば不安と向き合う中で、もし回避行動を取りたくなったら、
- 少しハードルを下げた向き合い方にシフトする
などが挙げられます。不安を回避してしまえば克服できないので、全く行動しないよりは小さな行動でも起こしていった方が前進します。
未来を想定した上で、具体的な行動まで設定することで、漠然とした未来への不安が和らぎます。
価値観を明確にする
「価値観」とは目的ではなく、
- こうでありたいといった、永続的な行動や自分の状態
のことを指します。
例えば、
家族との団欒を大切にしたい
感謝される人でありたい
ユーモアを大切にしたい
といったもの。価値観は人生のコンパスに例えられることがよくあり、これが明確になることで自分の判断基準が定まり、将来への不安が少なくなります。
自分の価値観を定めるのは、簡単なことではありませんが、「自分はどんな人でありたいか」を考えていただければ、ベースラインは見えてくるはずです。
逆にすでに価値観が見えている人もいるかもしれません。例えば、人見知りを克服したい!という人は、「もっとオープンな人でありたい」という価値観があると言えます。
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マインドフルネスを身に着ける
自己連続性を高めるには、マインドフルネスを身につけるということが大切になります。
今ここに集中する
マインドフルネスとは、簡単に言えば今ここに集中することです。
今ここに集中すると、一見将来の自分とのつながりがなくなってしまうように見えますが、実は自己連続性を高める効果があります。
今の集中し、自分を客観視することで現実的な視点が生まれ、今の自分とかけ離れた将来を思い描くことが少なくなるのです。
将来とのつながりといっても、「将来」は頭の中の概念でしかありません。そのため、いくらでも非現実的な妄想を膨らませることができるのです。
一方で、現在の自分は「現実」にあります。そのため、今ここの現実に集中することで、おのずと地に足のついた感覚が得られ、不安感を和らいでいくわけです。
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不安を受け入れる
マインドフルネスの重要な要素として、「評価判断しない」というものがあります。今この瞬間に起きていることに良い悪いと言った評価をつけずに、オープンに受け入れるのです。
例えば、不安が浮かんでも、「嫌だ」「やりたくない」などと思わずに、
- 不安があるな・・・
とだた受け入れていきます。この練習を継続することで、不安に飲まれにくくなり、回避行動も減っていきます。
最初は難しいですが、「嫌だ」「やりたくない」などと思ってしまっても、そのことに気づき、「嫌だ」「やりたくない」と思っているな…と受け入れていけばOKです。
セルフコンパッションを育む
セルフコンパッションとは、文字通り自分への思いやりのことです。冒頭で、不安に負けてしまうのは「未来の自分への思いやりが」ないことが原因であると解説しました。
まさにセルフコンパッションとは、長期的な視点を持ちつつ、自分に対して思いやりを持つことなのです。具体的には、
- 限界を超えない範囲で努力する
- 人間として避けられない苦しみに共感する
- 自分に対して優しい言葉をかける
などがあげられます。
人間として避けられない苦しみとは、ミスをしたり、周りから避難されたり、愛する人を失ったりなどの苦しみのことです。多かれ少なかれこのようなことは誰にでも起こりえます。
こうして苦しみに直面した時に、これも人生も一部だと。自分は人生を精一杯生きているんだと。自分に言い聞かせるなどがセルフコンパッションにあたります。
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まとめ
不安や恐怖からの回避行動は、未来の自分への思いやりの低下や自己連続性の不足が原因です。回避を克服するためには、小さなゴールを設定し、未来を具体的に明確にすることが重要です。
また、反応妨害やプランBの導入、価値観の明確化、マインドフルネスの実践が役立ちます。不安を受け入れつつ行動することで、回避行動の克服が可能です。
さらにセルフコンパッションを実践することで、未来の自分自分への思いやりを持つこともできます。ぜひできそうなところから試してみてくださいね。