エッジステートに学ぶ!消耗しない「人助け」の在り方とは

崖
本記事でわかること

・エッジステートの5つの資質
・消耗しない人助けの方法
・コンパッションの具体的な実践方法

もやもや

マインドフルネスや仏教の世界では、人助けを推奨することが多いです。

「自分のエゴを手放して、周囲に貢献しましょう」

といった具合で、他者貢献への重要性が説かれています。

もちろん社会貢献をしていくことは、意義のあることでもあり、また自分自身の心の充実感にもつながります。

しかし、一方で貢献の意義をはき違えると、貢献しようとしたつもりが、かえって社会に迷惑をかけてしまうこともあるのです。

今回は、コンパッションの文脈で語られる「エッジステート」という概念から、正しい社会貢献のあり方を解説していきます。

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エッジステートを学ぶと、コンパッションを安全に実践できます!

エッジステートとは

エッジステートとは、ジョアン・ハリファックス(2010)『Compassion : 状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力』[1]にて、以下のように説明されています。

満ち足りた人生を歩み、他者に役立つための基盤である、内面や対人関係における5つの資質

つまり、ざっくり言えば自分の内面や人間関係を充実させるための5つの資質のことを指していると言えます。

エッジステートの「エッジ(edge)」は崖という意味と、最先端という意味の両方を含んでいます。

5つの資質があれば、崖(エッジ)の上に立つように様々な可能性を見渡すことができると、ハリファックス博士は主張しています。

エッジステート

エッジステートの5つの資質

エッジステートの5つの資質は以下の通りです。

エッジステートの5つの資質

①利他性
⇒本能的に無私の状態で他者のために役立とうとすること。

②共感
⇒他者の感情を感じ取る力。

③誠実
⇒道徳的指針を持ち、それに一致した言動をとること。

④敬意
⇒命あるものやものごとを尊重すること。

⑤関与
しっかりと取り組むが、必要に応じて手放すこと。

これらの5つの資質があると、見返りを求めずに助けたり、自分の道徳観にしたがって行動したり、など対人関係や内面的によい影響をもたらしてくれます。

エッジ・ステートの負の側面

一方で、エッジステートの5つの資質は、一歩間違えると害となってしまうことも。具体的には以下の5つの弊害があります。

エッジステートの負の側面

①病的な利他性
⇒承認欲求にとらわれたり、相手を依存させてしまったりする状態

②共感疲労
⇒相手の感情と一体化しすぎて自分も傷つく

③道徳的な苦しみ
⇒正義感に反する行為に関わったり、目にしたときに生じる苦しみ。

④軽蔑
⇒自身の価値観と異なる相手を否定し、貶めること。

⑤燃え尽き
⇒過剰な負荷や無力感にともなう、疲弊と意欲喪失。

これらがあると、かえって人間関係で消耗したり、他人とトラブルになったりしてしまいます。

特にコンパッションと聞くと、「思いやりをもとう!」「人へ貢献しよう!」という意思が強くなりがちで、上記のような側面を見落としがちになるため、注意が必要です。

提唱者

エッジステートは、ジョアン・ハリファックス博士によって提唱されました。ハリファックス博士は、アメリカの禅仏教教師であり、人類学者、生態学者、公民権活動家、ホスピス介護者です。

韓国のスン・サン禅師から禅を学んだ後、ティック・ナット・ハンやバーナード・グラスマンに師事し、禅の修行を行いました。

ハリファックス

現在は、ニューメキシコ州サンタフェにある「ウパヤ禅センター」の住職兼指導教師を務めています。ハリファックスは、禅のピースメーカーコミュニティであるこのセンターを1990年に設立しました。

社会に参加した仏教徒として、「死にゆく人と共にあること」というマインドフルネスに基づくしっ終末ケアのプログラムを展開しています。

また、Mind and Life Instituteの理事として科学と仏教の関係を追求しています。

下記のTEDにて、コンパッションに関するスピーチを行っているので、興味がある方ぜひご覧ください。

コンパッションがエッジステートを健全にする

エッジステートを健全に保つためには、コンパッションがとても大切になるとハリファックス博士は説明しています。

ここでいうコンパッションとは、以下の内容になります。

人が生まれつき持つ「自分や相手を深く理解し、役に立ちたい」という純粋な思い。自分自身や相手と「共にいる」力。

コンパッションを上手く活用することで、エッジ・ステートを発揮させ、また負の側面に陥っても、また健全な状態に戻れるよう導いてくれるのです。

コンパッションのGRACEモデルとは?

具体的なコンパッションの実践方法として、ハリファックス博士が提唱したものにGRACEモデルがあります。

GRACEは以下のフレーズの各頭文字を覚えやすく組み合わせたものです。

  1. 注意を集める(Gather attention)
  2. 意図を思い出す(Recall our intention)
  3. 自らと調子を合わせ、それから相手と合わせる(Attune to selfand then other)
  4. 何が役立つか考える(Consider what will serve)
  5. 関与をもって実行し、完了する(Engage and end)

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.注意を集める(Gather attention)

まずは一呼吸置いて、地に足をつける時間をとります。息を吸って、注意を集中させましょう。息を吐き、力を抜いて注意を身体に委ね、身体の安定している部分を感じとります。呼吸に注意を向けるのもよいでしょう。

体のバランスが保たれている部分を意識するのもOKです。

座っていれば、床とお尻や足が触れている感覚、立っていれば足の裏などに注意を向けましょう。

注意を集中させる時間を持つと、自分の考えや妄想に囚われず、冷静な思考を保つことができます。

地に足をつける

2.意図を思い出す(Recall our intention)

他者への貢献に心に留め、ときにそれを思い出すことが必要です。

自分たちの心を開く目的を再確認すればOKなので、わずかな時間でも十分。

この目的が明確であれば、高い価値観や道徳観にそって、他者との関わりを構築できます。

3.自らと調子を合わせ、それから相手と合わせる(Attune to selfand then other)

感情のままに相手に共感すると、先ほど説明した「共感疲労」の状態になってしまうことが多いです。

そこで、まず、自分自身の

  • 身体
  • 感情
  • 思考

を観察しましょう。

それから、相手の状態に共感していきます。これによって、共感しつつも、相手の感情に巻き込まれずに冷静に対処ができるようになります。

4.何が役立つか考える(Consider what will serve)

冷静な理解に基づきつつ、智慧を使って「何が役に立つか?」を判断するステップです。

自らに問いかけ、

「この状況において、智慧とコンパッションにかなった行動はどのようなものか。どのように対応するのがふさわしいか」

と考えます。

相手のために役立つ方法を感じ取り、洞察力を使って相手の経験を理解します。

このステップでは、グループや社会からの要求や期待も考えつつ、三方よしの判断を下すことが求められます。

この判断には時間がかかるため、慌てずに落ち着きを保ちながら、判断していきましょう。

5.関与をもって実行し、完了する(Engage and end)

適切な状況で、倫理に基づき関与し実行するステップです。例えば、

  • 相手をサポートする
  • 相手に問いかける
  • 相手に提案する
  • 何もせず共感を示す

などが挙げられます。

自分の価値観と一致しつつ、お互いに誠実さを持てる状況を探っていきます。このようにして、生まれるコンパッションは、周囲の尊厳を大切にしつつも、自分自身をないがしろにしないバランスのとれたものになります。

自分の状況、相手の状況を観察し、理解することで消耗しない本当の意味での「人助け」ができるようになるのです。

まとめ

「与えると返ってくる!」「ギブ&テイクが大切だ!」といった論をよく耳にしますが、盲目的に貢献しようとしても、すぐにエッジステートの崖から転落し、負の側面を味わってしまうでしょう。

そこで、マインドフルネスやコンパッションを育むことで、智慧と慈悲を育み、冷静さや洞察力をもって今自分にできることを行うことが大切です。

個人的には、GRACEモデルはセルフコンパッションの概念よりも、仏教的な要素が多く含まれているため、非常に欠点が少ない方法だなと感じました。

ただ5つのステップだとやや長いので、簡易的に「気分を落ち着ける」⇒「道徳観を思い出す」⇒「状況を観察し、行動する」といった具合に最初は3ステップぐらいにまとめてやると、継続しやすそうですね。

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マインドフルネス実践者/Webライター(公認心理師運営サイトのライター)

幼稚園から小学校4年まで学校では一言も話せない状態を経験。その後15年間、対人不安、強迫観念などの症状に悩まされる。マインドフルネスと出会い、これらの症状とうまく付き合えるように。現在では、マインドフルネスの発信をしつつ、原始仏教の実践にも取り組んでいる。※仏教は超初心者です
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