ACT(アクト)で人生の価値を明確にする質問集

当エントリが解決するお悩み

・人生の方向性がわからない
・人生が味気なく感じる
・何がしたいのか分からない

 

人生の満足度を高めるには、自分の価値観に沿った行動をとることが大切だと、心理療法ACTでは考えられています。

しかし、一口に価値観と言われても、何を意味するものなのかわからないという人も多いでしょう。

価値観がハッキリしないと迷いが多くなってしまいます。その結果、メンタルヘルスが落ち込みやすく、抑うつ症状が現れやすくなります。

そこで、今回はACTで価値観を見つける方法を初心者にもわかりやすく解説していきますね。

価値とは何か

そもそも、価値とは一体何を指すのでしょうか?

ACTの提唱者の1人であるラス・ハリス博士は、著書「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない」で次のように価値を定義しています。

心の中のもっと深い欲望。何になりたいか、どんなものを支持したいか、世界とどのように関わりたいかなど。人生を通して私たちを導き動機づける主要な原理。

つまり、簡単に説明すると、

「どんな人間になりたいか」
「理想の自分像」

などが価値観にあたるということですね。

ACTでいう価値観は、何かを良い悪い、好き嫌いと判断する一般的な意味での価値観でありません。自分にとって「重要なもの」「意義があるもの」という個人の理念のようなものです。

価値観を見つける質問集

前述した通り、価値観は心の深い部分の存在するものです。

そのため、単になりたい自分を想像するだけでは、価値を明確にすることができません。

もっと自分の深層心理を掘り下げていく必要があります。そこで、以下の3つの質問に答えてみましょう。

①80歳の自分を想像する

まずは始めにご紹介するのが、自分が80歳になったときをイメージするという方法です。人生が終わりに近づいた時、どんな生活を送りたいかを考えるわけですね。

手順としては、以下の通りです。

 

1.80歳の自分を数分間かけて、思い浮かべる、もしくは紙に書き出す

2.80歳になったつもりで、人生を今日一日のように振り返る

 

そして、次の文章を作成してみましょう。

 

  • 私は〇〇を恐れることにあまりに多くの時間を費やしてきた
  • 私は〇〇のようなことにほとんど時間を使わずにきた。
  • もし時を戻せるなら、今までやらなかったことの中で何をするだろうか。

 

注意点!

目標や目的と価値は全くの別もの。達成したらおわりというものではなく、価値とは「どうあり続けたいか」という永続的な欲求です。

②魔法の杖を振る

ACTでは、価値観を見つけるための質問として、「魔法の杖」というものがあります。具体的には、以下のような質問になります。

私が魔法の杖を振ったら、全人類があなたに賛同するようになる。この時、あなたはどんな態度を振舞うだろうか?また何をするだろうか?

この質問は、何かと理由をつけて、価値から目を背けてしまう場合に役に立ちます。

人は目指したい理想像があっても、

「そんなの自分には無理だし…」

と言い訳をして、価値から逃げてしまうことがあるのです。また、世の中の善悪やモラルといったものを取り払うことができ、完全に自由に選択することができます。

③自分の強みや資質を振り返る

続いて、自分の強みや資質を振り返る質問に答えてみましょう。

あなたはどんな人間的な強みや資質を持っていますか?新しく伸ばしたい能力はどんなことですか?またそれをどのように伸ばしていきたいか?

この質問では、自分の長所や才能などに目を向けていきます。

ただ、人よりも優れていること探すと、「出てこない…」ということになりがちです。

そこで、自分の中でもっとも高い能力はなんだろう?という視点で考えてみてください。他人と比較するのではなく、あくまでも自分の中で比較するのです。

人生の4つジャンルで価値観を見つける

ACTでは、人生を4つのジャンルに分けて価値観を探していきます。具体的には、以下の4つに分けて、それぞれの質問に答えていきます。

1.人間関係

どのような関係を築きたいか?

その関係の中でどのように振る舞いたいか?

どんな個性を育みたいか?

理想の自分だったら他人に対してどのように接するか?

これらの人々のうち何人かと一緒に、一生続けたい行動はどんなことか?

2.仕事・教育

職場、あるいは学校に、どのような資質を持ち込みたいか?

もし理想の自分であったら、同僚や上司、クライアント、先生や同級生などにどのように接したいか?

仕事場や学校でどういった人間関係を構築したいか?

自分の中のどういったスキル、知識、能力を開発したいか?

3.個人の成長、健康について

どのような活動をスタートしたいか、または再開したいか?

どんな集団やグループに入りたいか?

自分の生活スタイルをどのように変えたいか?

4.余暇

どんな趣味、スポーツ、レジャー活動に参加したいか?

健康的で人生を充実させ、かつリラックスしつつ継続して取り組めることは何か?

どんな活動に参加したいか、または今よりももっと行いたいことは何か?

価値評定スケール

「価値評定スケール」というツールも非常に使えます。

ACTは4つのジャンルごとに価値を明確にしていきましたが、こちらは以下の12項目でやっていきます。

1.家族

家族とどんな関係を築きたいか?

理想の自分なら家族に対してどう振る舞うか?

2.結婚・恋愛

どんな恋愛や結婚をしたいか?

パートナーのどんな個性を育てたいか?

3.子育て

親としてどのように振る舞い、子ども育てたいか?

子どもとどのような関係を築きたいか?

4.友人・対人関係

どんな友人と関わりたいか?

友人や対人関係の中で、どのように振る舞いたいか?

5.仕事・キャリア

仕事をもっと意味のあるものするなら何が必要か?

自分のどんな資質を仕事に生かしたいか?

6.自己成長

どんなスキルを身につけたいか?

成長するには自分のどんな資質を生かしたいか?

7.余暇・レジャー

どんな趣味や遊びをしたいか?

自分が一番リラックスでき、楽しめる時はどんな時か?

8.スピリチュアリティ

宇宙や大自然、宗教などの人知を超えたものに対してどんな考えを持っているか?

9.コミュニティ・社会生活

どのようはグループや集団に参加したい?

どんな資質を生かしてグループに貢献したいか?

10.健康

身体の健康のどの部分に重点を置いているか?

食事、運動、睡眠をどのように改善したいか?

11.環境

大気汚染や公害など環境問題に対してどのように貢献したいか?

12.芸術

音楽や絵画、文学などの芸術とどのような関係を築きたいか?

どんな芸術活動を行いたいか?

これらの質問に答えたら、各ジャンルについて以下の項目を、1~10点で採点します。

「重要度」:自分の人生にとってどれだけ重要か?

「一致度」:過去一か月を振り返ってどれだけ価値観と一致した生活が送れていたか?

この2つを採点することで、自分どれだけ価値ある行動を避けているかがわかります。

また、自分にとって重要な人生のジャンルについて把握することができます。

コアバリューリスト

最後にご紹介するのが、価値観を表す50の単語をリスト化した「コアバリューリスト」です。

リストについて以下の3つの基準で分類していきます。

 

  • とても重要「◎」
  • 重要「○」
  • 重要ではない「×」

 

そして、とても重要に選ばれたものの中からさらに10項目に絞ります。次に、重要度の高いものから1位から10位まで順位づけしていきます。

▼コアバリューリスト

真正性(偽らない)
冒険
権限
自律
バランス
美しさ
大胆さ
同情
チャレンジ
市民権(権利や権限の尊重)
コミュニティ
コンピテンシー(成果を出し続ける行動特性)
貢献
創造性
好奇心
決定
公平性
信仰
名声
友情
楽しい
成長
幸福
正直
ユーモア
影響
調和
正義
親切
知識
リーダーシップ
学習

ロイヤリティー(自分だけの特権)
意味のある仕事
開放性
楽観
平和
喜び
人気
認識
宗教
評判
尊敬
責任
セキュリティ
自己尊重
サービス
精神性
安定
成功
状態
信頼性

知恵

さて、いいかがでしょうか。

1位〜10位までランクづけしたら、その順位に沿って高いものから「価値評定スケール」や「ACT式質問集」でご紹介した、人生のジャンルでどのように活かせるかを考えていきます。

価値がわからない時の対処法

価値観は、時にそれに従う際に大きな苦しみや不安を伴う可能性があります。

私たちは、幼い頃から、さまざまなルールや社会常識に自分を合わせるように教育されて生きてきました。そのため、大衆から逸れた価値観を選ぶ場合、恐怖心や不安感が生まれてしまうのです。

無意識に価値観を否定したり、「自分には無理だ」と思い込んだりして、価値観が見つかっても、それが大切なことなのかわからなくなってしまうのです。

そこで、ACTでは、価値観がわからない時の対処法も作られています。私の個人的な考えも含まれますが、以下に詳しく解説します。

①これが価値かどうかわからない

価値を見つけるための方法で、導きだされたものが価値かどうかわからない場合は、以下の質問に答えてみましょう。

 

1.もし、奇跡が起こって誰からも100%承認が得られるとしたら、自分の人生で何をし、どんな人間になろうとするか?

2.他人の価値判断や意見から自由になれたら、今とどのように違うことをするか?

 

この2つの質問で、自分の理想を明確にします。そして、さらに以下の質問に答えてみましょう。

 

1.自分の葬式に集まった、最も大切な人達の会話を聞くことができるとしたら、どんな言葉を聞きたいか?また、自分が演じた役割についてどのように考えてもらいたか?

2.余命があと1年だとしたら、どんな人間として振る舞い、何を成し遂げたいか?

 

以上の質問は人生の最後を意識される質問です。自分の死について考えることで、死ぬ前にはやっておきたいことがわかります。

 

もし、これが価値かわからないという場合には、それをやらずに死ぬのは悔いが残るだろうか?と自問してみるもの良いでしょう。

②そんなことは考えたくもない

人は自分の大切なことから目を背ける傾向があります。そのため、価値と向き合うことに抵抗がある場合も多いのです。こうした場合、思考と現実を同じように捉える

「認知的フュージョン」

の状態にあると言えます。

思考はほとんどの場合、ネガティブなことばかり伝えてきます。ここで、活用するのが

脱フュージョン

という方法です。やり方はシンプルで、「~と思った」を付け加えるだけです。例えば、

「どうせ自分には無理だ」という思考が浮かんだら、

「どうせ自分には無理だと思った」と考え直すのです。

~思ったを付け加えるだけで、それは思考ではあって、現実ではないことを認識できます。価値と向き合う時に「そんなことは考えたくもない」という思考が浮かんだら、脱フュージョンを行いましょう。

③価値観同士がぶつかり合ってしまう

場合によって価値同士がぶつかりあってしまうこともあります。例えば、

「仕事・キャリア」

で社会に貢献したいという価値があったとしても、

「子育て」

の部分で、子どもとの時間を大切にしたいという価値とぶつかってしまいます。こうした場合、優先順位をつけて、ベストなバランス見つけることが大切です。

価値についての注意点

最後に価値について4つの注意点をご紹介していきます。

①価値は軽く持っているぐらいでいい

価値観を決めたら、自分は「この方向性」で進んでいくんだ!と意気込んでしまうのが普通です。しかし、注意しなくてはいけないのが、

 

  • 必ず価値に従わないといけないわけではない

 

という部分です。

あくまで自由に選択することが大切で、「価値に沿って生きなきゃ…」となってしまっては本末転倒です。ACTでは、こうした状態を

「価値とフュージョンしている」

と呼びます。

必要な時だけ価値に従えばいいので、24時間意識しつづける必要はないのです。

②価値は自由に選択できる

価値は誰かから強制されて選ぶものではありません。完全に自由に選択することができます。これは趣味に置き換えてみるとわかりやすいですが、

・サッカー
・石ころマニア
・昆虫マニア

こうした趣味は完全に自己選択で選んでいますよね。

皆がやっているからとか、これが正しいから、これが間違っているからとか、そういった一般常識は抜きにして、「自分がどうしたいか」を大切にします。

③価値を正当化する必要はない

価値を選ぶ時に、「○○だから」などの理由づけは必要ありません。あなたが選んだものがすべてであり、それ以上でも、それ以下でもありません。

もし、何かしらの理由があって、価値を選んでいるとしたら、それは真の価値ではない可能性があります。正当化もせず、ただ素直に選ぶことが大切です。

・犯罪してもいいの?
ここまで話を聞いて、犯罪をしてもいいのか?という疑問を抱く方もいるかもしれません。

基本的には、あなたの倫理観を曲げてまで、価値のワークを行う必要はありません。

ただ、価値とは、

「どう生きたいかという根源的な欲求」

です。

ありのままに自分の価値を見つめると、自然と「道徳的で倫理的」なものが価値であることに気づきます。

 

  • 道徳的な「価値」を選ぶのでなく、
    自分で選んだ「価値」が道徳的なものだと気づくのです。

 

もし、犯罪をしたいという気持ちがあるとすれば、本来の価値から目を背けている可能性が高いです。ACTの第一人者であるラス・ハリス博士は、価値と倫理観について以下のように述べています。

彼が犯罪を行うとき、自分の価値に基づいてマインドフルに行動していることはまずありえない。ほとんどが衝動的なものであるか、フュージョンや回避に突き動かされての行動なのだ。

大切なものから逃げたい衝動で、犯罪などの非倫理的な行動を犯してしまうのです。犯罪者として生涯を全うして悔いがないか?を考えれば、答えは見えてくるはずです。

④価値はそうそう定まるものではない

ここまで、様々な価値のワークをご紹介してきました。ただ、これらのワークを行ったからと言って、すぐに価値が見つかるわけではありません。

価値っぽいものは見つけることはできても、それが真の価値であるかはハッキリしない場合が多いです。

価値は人生の中で、様々な経験するなかで、ハッキリしてくるものです。そのため、ワークで見つかった価値は”とりあえずの価値観”で、暫定的なものにとどめておきましょう。

これから人生経験を積むなかで、「あ、やっぱりこれが価値だったか…」とハッキリする日が来るはずです。

⑤最終的には価値観はないほうがいい

最後に記事の内容と大きく矛盾することを言いますが、「価値観」はないほうがよいです。これはACTの話しではなく、源流である初期仏教の切り口から書いています。

元来マインドフルネスとは、あるがままに物事を観る実践。一方で、価値観は完全に主観的なものの見方なため、客観的に物事をとらえることができなくなってしまいます。

実際にありのままに観れば、大切なものなど存在せず、ただ自然法則によって現象が起こったり、動いたりしているだけです。

しかし、今自分が大切にしているものをすぐに全部手放そうとすると、耐えがたい苦しみに直面します。

あくまでも価値観はありのままに物事を観るための補助輪として考えて置き、徐々に手放すことが大切です。

すべての価値観を手放した時の本当の意味で、心は柔軟でクリアな状態となるのです。

まとめ

基本的に今回ご紹介した質問に答えていけば、自分の本当に大事にしている価値が見えてきます。いま人生が味気ないと感じている人は、価値から目背けながら生活している証拠です。

自分の価値に向かって行動することで、充実感や幸福感を得ることができます。まずは、ここで紹介したテクニックで価値を明確にしてみてくださいね。

出典

ラス・ハリス(著)武藤 崇  (監修, 翻訳), 岩淵 デボラ (翻訳), 本多 篤 (翻訳)よくわかるACT 明日から使えるACT入門 星和書店 2012

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