ACTのコアテクニック「拡張」で現実を受け入れる力をつけよう

スペース
本記事でわかること

・ボディアウェアネスの重要性
・拡張の4つのステップ
・衝動を波乗りする方法

マインドフルネスでは、自分の状況や感情、思考などを「アクセプタンス(受容)」することが大切にされています。

といっても、不快な感情は受け入れ難いですし、嫌なことは誰しもやりたくないはず。アクセプタンスは一種の根性論なのでは?と考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、科学的に「アクセプタンス」を行う具体的な方法や手順があります。

今回はその中の1つである、「拡張(エキスパンション)」というテクニックのご紹介します。

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拡張は使いやすく効果も高いので、誘惑に襲われた時に行うのがおすすめです!

拡張(エキスパンション)とは

拡張とは、以下のような技法になります。

 

不快な感情や思考を受け入れ、それらに居場所を与えるテクニック

 

拡張は、心理療法ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)で用いられるテクニックです。

名前の通り、ACTでは「アクセプタンス」を大切にしており、不安な感情やネガティブな思考をなくそうとせず受け入れるのが大きな特徴です。

このアクセプタンスを行うための技法が拡張になります。

拡張(エキスパンション)を行う際の事前準備

ボディアウェアネスを育む

拡張を実践するには、まず、

「ボディアウェアネス」

というスキルを鍛えることが大切。

ACTの提唱者であるラス・ハリスによれば、ボディアウェアネスとは以下のように説明されています。

思考する自己ではなく、観察する自己を通じて身体の感覚とその起源に気づくこと

観察する自己とは、変わっていく流れを眺める自己のことです。

つまり、身体の感覚について「思考」するのでなく、「観察」することがボディアウェアネスであると考えてよいでしょう。

不快な思考や感情が湧いた時には、身体が緊張していたり、こわばったり、呼吸が浅くなったりしていることがあります。

この時、多くの人は体の状態に気づかず、思考に巻き込まれてしまうのです。

ボディアウェアネスの感覚を高める方法

そして、ボディアウェアネスの感覚を育む最もシンプルで効果的な方法は、

 

  • 日常生活の中で身体の動きを観察しながら過ごす

 

ことです。

立つ、座る、歩く、手を伸ばす、伸びをする…などどんな動作も気づきながら行うように意識すると、自然にボディアウェアネスの感覚も養われていきます。

もし、可能であれば「ボディスキャン」「マインドフルヨガ」といったフォーマルな瞑想法を取り入れると、より効果的です。

拡張の4つのステップ

日々ボディアウェアネスの感覚を高めつつ、不快な感情や思考が現れた時には以下の拡張の4つのステップ行います。

ステップ 1: 観察する

不快な感情や思考が現れたら、数秒かけて頭からつま先まで身体をスキャンします。

すると、感情に応じて緊張したり、弛んだり、呼吸が速くなったり、遅くなったりしていることが分かるでしょう。こうした感覚の中で、最も不快なものに注意を向けます。

その不快感は、

・大きいか
・小さいか
・動いてるか
・止まっているか
・熱いか

・冷たいか
・皮膚の表面で感じるか

・皮膚の内側で感じるか
・どのくらい感じるか
どこで始まって、どこで終わるのか

などを好奇心旺盛な科学者のような気持ちで、観察していきます。

ステップ 2: 息を吹きこむ

不快な感覚を観察しながら、できる限りゆっくりと深呼吸をしましょう。この時、息を吐き切ることが大切です。

深く呼吸をすると、感情を消すことはできませんが、体の緊張が和らぐはずです。

身体の緊張が和らぐことで、感情から適度な距離置くための余裕が生まれてきます。

ステップ 3: 居場所をつくる

緊張が落ち着いてきたら、息を吹き込むと同時に自分の中に広大なスペースが広がっていくことを想像します。例えば、

 

・部屋が広がっていく様子
・広大な自然が広がっていく様子
・風船が膨らんでいく様子
・トレイが広がっていく様子

 

など自分が最もしっくりくるイメージを選んで構いません。

そしてそのスペースに、不快な感情や思考、感覚を入れて「ここで自由してていいよ」「ずっといてもいいし、いなくてもいいし、また戻って生きてもいいよ」という気持ちをもって、居場所を与えていきます。

次にスペースにいる不快感や思考、感情の変化を観察していきます。

もし感情や感覚が強くなるようであれば、さらに大きなスペースをイメージしましょう。

ステップ 4: 存在を許す

感情や思考、感覚が不快なものであっても、その場所にいることを受け入れていきます。

この時、思考する自己は、

 

「こんな感情抱いたらヤバい!早くなくさないと!何をやっているのか」

 

と言うかもしれません。

その時は、思考する自己に、

 

「自分を心配してくれてありがとう」

 

と感謝を伝え、観察に戻っていきます。

もちろん簡単なことではないかもしれません。それでもなお、思考する自己が主張してくる場合には、以下のような言葉を頭の中で唱えてみましょう。

 

「難しい感情だが、私の体にはそれを受け入れるのに十分なスペースがある」

「不快な感覚だが、今はここに居させてあげよう」

「嫌な思考だが、これも人生の一部だ。全身全霊で受け入れよう」

 

など自分がしっくりくるフレーズを作って、唱えてみましょう。すると、不快な感覚や衝動を受け入れ、観察する自己へがアクティブになるはずです。

拡張の応用:アージサーフィン

拡張の応用テクニックとして「アージサーフィン」と呼ばれるものがあります。

アージとは、衝動のことで、強い衝動を乗りこなすためのACTの技法です。

心理学者の G. アラン マーラットとジュディス R. ゴードンによって、依存性を改善する目的で提唱されました。

拡張で「衝動」を波乗りする5つのステップ

具体的なアージサーフィンのやり方は以下の5つのステップで行います。

  1. 観察する自己を使って、体の中の衝動とつながります。
  2. 思考する自己を使って、その衝動を認識し、名前を付けます。たとえば、甘いものを食べたいという衝動であれば、「甘党がいるな…」といった具合。
  3. 深呼吸をして、その衝動を受け入れるためのスペースを体の中に作ります。この時、ネガティブな感情を払いのけようとする必要はありません。
  4. 衝動が変化するのを観察していきます。それでも思考する自己が入ってくる場合は、脱フュージョンを行いましょう。ステップ 2の衝動を認識して名前を付けるを繰り返しても構いません。
  5. 衝動が落ち着いてきたら、自分の価値観を従って行動していきます。

ネガティブな感情から起こる衝動は、多くの場合、幸福になろうとして不幸になる「コントロール戦略」につながったり、自己破壊的な結果に終わることが多いです。

衝動をうまく波乗りできれば、自分とってより良い選択ができるようになり、あとで後悔することも少なくなります。

まとめ

拡張は一朝一夕で身につく技術ではありませんが、繰り返し練習することで、不快感や衝動を波乗りできるようになります。

すると、

「今日はモチベが上がらない」

「あんなことしなければな…」

「甘いものを食べたい」

などの状況に左右されず、自分の本当にやるべきことに集中できるようになります。

身につけるのは非常に骨の折れる作業ですが、地道に練習を続けていきましょう。

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