近年の研究では、マインドワンダリングは創造力を高めることが示唆されています。
一方でマインドワンダリングには多くのデメリットも存在するため、創造力を高める目的で行うのはコスパが芳しくないかもしれません。
今回はマインドワンダリングに関する研究を紐解きつつ、創造力を高める方法について考察していきたいと思います。
アイデアを出すにはマインドワンダリングが必要
マインドワンダリングとは、ぼんやりしている状態で、感情や思考に自動的に流されてしまっている状態を指します。
この状態では、脳のデフォルトモードネットワークが働き、注意散漫になる一方で、想像力が高まることが示唆されています。
例えば、山岡ら(2016)[1]研究では、大学生538名を対象に質問紙調査を用いて、マインドワンダリングと独自性の関係を調査しました。
その結果、独創的なアイディアを出せる性質が「中程度」ある場合にもっとも、マインドワンダリングが高いことが分かりました。
適度なマインドワンダリングは創造性を高めるメリットがあると言えるでしょう。
マインドワンダリングにはデメリットが多い
ここまでの話を聞くと、マインドワンダリングは善玉!と思えてしまいますが、それをはるかに上回るデメリットがマインドワンダリングには存在します。
デメリットは以下の通りです。
・反芻思考につながる
・衝動性が増す
・セルフコントロール力の低下
・集中力の低下
・注意力の低下
・情緒不安定になる
・不安の増加
などなど悪い面が山ほどあります。
そのため、個人的には創造力が高まるからといって、積極的にマインドワンダリングな状態りなろうとするのはどうかと思います。
マインドフルネスでも創造力は高まる
マインドワンダリングが創造性を高めると聞くと、逆の状態であるマインドフルネスは創造性を下げてしまうのでは?と考えてしまうかもしれません。
しかし、ある特定の瞑想法であれば創造性が高まることが分かっています。それは「オープンモニタリング瞑想」です。
オープンモニタリング瞑想とは、思考や感情、感覚など今起きているあらゆるものを、観察する瞑想です。
Izabela Lebudaら(2016)[2]の研究では、1977 年~ 2015 年の間に発表された研究の 20 サンプルから得られた 89 個の相関関係のメタ分析を行い、マインドフルネスと創造性の関連性を調べました。
その結果、以下のことがわかりました。
統計的に有意ではあるが比較的弱い相関関係 (r = 0.22) を実証します 。 この効果はマインドフルネスのタイプによって緩和され、オープンモニタリングの側面よりもマインドフルネスの意識の側面の場合の方が著しく低かった。
※Abstractより引用
弱い相関ではあるものの、マインドフルネス瞑想ではなく、オープンモニタリング瞑想には効果があるようです。
それもそのはずで、オープンモニタリング瞑想は創造性につながる拡散的思考を高めることが示唆されています[3]。
考察:外側から見ると、アイデアが出る
これは私の勝手な推測ですが、マインドワンダリングの状態でアイディアが多く出るのではなく、問題から距離を置いて頭の中がクリアになった途端に良いアイディアが湧いてくるのだと考えています。
例えば、よくあるお風呂の中で、車を置いているときに、アイディアが浮かぶのは、マインドワンダリングが起きているからと言うよりは、問題から距離を置いたことによって、視野が広がり、別の角度から物事を見られるようになったことが原因なのではないかと考えています。
ずっーと、机の上でうーん、うーんと問題を考え続けていても、問題が近すぎて画一的なアイデアしか出てこないでしょう。
何かに集中するような瞑想ではなく、俯瞰した視点で観るオープンモニタリング瞑想の方が創造性が高まるのは、こういう部分があるからではないかと思います。
今の状態を俯瞰することで、自然と今抱えている問題から距離をおくことができ、結果として自然発生的にアイディアが創出されるのかもしれません。
・ほどほどのマインドワンダリングは創造力を高める
・マインドワンダリングはコスパが悪い
・オープンモニタリング瞑想でも創造力は高まる