マインドフルネスにダイエット効果はあるか、疑問に感じる方も多いでしょう。
結論から言うと、自分マインドフルネス単体にはダイエット効果はありません。
ただマインドフルネスを用いた心理療法であるACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)には効果があるとされています。
今回は最新の研究をもとにマインドフルネスのダイエット効果を解説しつつ、ACTを使ったダイエット法について解説していきますね。
Contents
ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)であれば効果がある
マインドフルネス単体ではダイエット効果は薄い
Elenaら(2023)[1]では、マインドフルネスがダイエットに与える効果を調べた信頼性の高い研究があります。
マインドフルネスと体重減少・BMIの低下に関する13件の研究を精査し、その効果を調べました。
その結果、マインドフルネスは、
- 短期的にストレスを軽減するが、
体重減少やBMIの低下につながる証拠を見つからなかった。
と報告されています。
調査されたマインドフルネスの研究は、MBSR、MB-EAT(マインドフルネスに基づく食事の認知療法)、マインドフルイーティング、マインドフルネス介入といった内容でした。
マインドフルに食事したり、定期的に瞑想したりすることがダイエットに繋がるとは言えないようです。
ACTだけ有意にBMI減少に効果あり
一方で、別のメタ分析[2]では、560人を対象にマインドフルネスに関する15件の研究を精査して、マインドフルネスが減量にどの程度影響を与えるかを調べました。
その結果、以下のことが分かりました。
- アクセプタンス&コミットメント療法のアプローチを利用した研究では、BMIの改善に唯一有意な効果が得られた
※アブストラクトから引用
他のマインドフルネスのアプローチはBMIの減少には効果が見られなかったものの、ACTのみ有意に減少が見られたのです。
ACTは自分の大切にしたい価値観に沿って、不快な感情を受け入れつつ、行動する心理療法です。
ACTについてより深く知りたい方は下記をご覧ください。
ACTでダイエットを成功させるための実践法
それでは、ここからACTを使ったダイエット法について見ていきましょう。
前提として、マインドフルネス瞑想は行っているものとして話しを進めていきます。
脱フュージョンを学ぶ
まず、脱フュージョンを学ぶことが重要です。脱フュージョンは、簡単に言えば、「思考」と「現実」を分けるテクニックです。
やり方は簡単で、ただ思考のあとに「~と思った」と付け加えるだけです。
例えば、以下のような感じです。
デザートを食べたい!
→デザートを食べたいと思った
早く痩せたい!
→早く痩せたいと考えているな
運動したくない…
→運動したくないと思っているな
このように、「思考」はあくまでも「思考」であると認識することで、自分を客観視でき、衝動的な行動を抑えられます。
その結果、感情や誘惑に流されず、必要な行動を起こすことができるのです。
アクセプタンスを学ぶ
アクセプタンスとは、今この瞬間の体験にオープンになり、受け入れる姿勢のことを意味します。
ダイエットをする上で、重要なポイントは、
- 今の自分の体型をいかに受け入れられているか
です。
例えば、自分の体型を受け入れられないと、以下のような問題が起きます。
「太っている自分はダメだ…」などと自己批判をする→ストレスが増加し、かえって暴飲暴食などの結果に繋がる可能性が高まる。
「まだ自分は太っていない!」などと事実を脚色する→ダイエットに必要な行動を先延ばししやすくなる。
アクセプタンスは自分の状況をありのままに、批判も評価もせずに、ただ地図で現在地を確認するイメージで行います。
また体型だけでなく、不快な感情をなくそうとしたり、目を背けたりせずに受け入れることも大切です。
ダイエットをする過程では、嫌な気持ちに苛まれることも少なくないでしょう。
「甘いものを食べてしまいたい…」「運動したくない…」といった感情をなくそうとせず、ただ感情に居場所をつくり自然に消えていくことを観察します。
価値観を定める
それでも不快な感情や思考を受け入れる時、始めのうちは苦しみを伴います。
単純に痩せたい!という気持ちだけでは、すぐに心が折れてしまい、ダイエットを継続することができないかもしれません。
そこで、重要となるのが「価値観」です。
価値観とは、
- どうありづづけたいかという心の奥底にある意欲
のことです。
価値観は目標のように達成したら終わるものではなく、今この瞬間から終わることなく目指し続けられる人生の方向性です。
例えば、東京に行くという目標には終わりがありますが、東にいくという方向性には終わりがありません。
具体的に価値観を見つけるための方法は以下をご覧ください。
行動プラン・目標を設定する
価値観が定まったら、それをベースに具体的な行動プランを定めていきます。
目標設定のコツは、とにかく細分化することです。
目標が大きすぎると、今の自分とのギャップが生まれ、自己批判的になってしまう恐れがあります。
また目標が曖昧だと「どんな行動」を取ればいいかわからなくなり、やる気が出てこなくなります。
具体的には、以下のように目標を立てていきます。
■目標が大きすぎる場合
・3ヶ月で5kg痩せる
→1か月で2kg痩せる、2週間で1kg痩せる
■目標が曖昧な場合
・週1回運動する
→日曜日の朝7時に近所の川沿いを1周する
目標を決めたら、自分の価値観と結びつけていきます。
例えば、
・他人に貢献したい
という価値観であれば
「目標をやり遂げる性格を育てれば、仕事や人間関係などで、より人の役に立てるようになる」
「身体の調子がよくなれば、各方面でよりよいパフォーマンスを発揮できるようになる」
など少し強引ですが、ダイエットの目標達成することと、自分の価値観がどのように結びつくのかを考えていきます。
すると、モチベーションが持続しやすくなり、ダイエットの成功率も上がってきます。
痩せるためのマインドフルネスの副作用
ここまでは、科学的にマインドフルネスとダイエットの効果・やり方について解説しました。
基本的にはACTに沿ってダイエットを行っていけば、問題なくダイエットは成功できるでしょう。
ただダイエットのためだけにマインドフルネスを行うと痩せたとしても、別の問題が現れる可能性が高いです。
痩せるだけでは心の問題は消えない
仏教心理学的な立場から見ると、ダイエットに成功することだけを目標にすると、心の問題はなくならないかもしれません。
ダイエットには成功しても、自我が強すぎると以下の状態になってしまう恐れがあります。
・痩せている自分に酔う
・太っている人を見下す
・きれいになった自分に執着する
その結果、痩せたのになぜか周りから避けられるようになったり、少し太っただけで過度に悩んだり、焦ったりしてしまいます。
自他の役に立つ「価値観」をベースにすれば副作用はない
そこで、必要なのはマインドフルネスの本来の目的を頭の片隅に置いておくことです。
マインドフルネスは、自我を手放すこと、こころがクリアになることが本来の目的。エゴのためのマインドフルネスは、目標達成できても必ず副作用が起こります。
これは単なる道徳論的な話ではなく、物を落としたら落ちるというような客観的な事実です。
自我が弱くなることで、他人にとっても自分にとっても良い選択をできるようになります。その結果、何かに執着することもなく、他人を見下すこともなく、また心の問題も和らいでいきます。
価値観は人に強制されるものではないですが、自分や他人の役に立つ価値観を選択すると、ゆらがない幸福感も得られるでしょう。
まとめ
マインドフルネス単体ではダイエット効果はないですが、ACTのように体系的にマインドフルネスを取り入れることでダイエット効果も現れるようです。
マインドフルネスをダイエットに活かしたいと考えている方は、ACTを学んでみると良いでしょう。
マインドフルネスの本来の目的を意識しつつ、目標に向かっていけば日々充実して生き生きとダイエットの過程を楽しめるはずです。
・マインドフルネスのダイエット効果
・ACTを用いたダイエットのやり方
・ダイエットのためのマインドフルネスの副作用