コンパッション(慈悲)は意味がない?人から信頼される理由

慈悲

コンパッション(慈悲)が大切!というのが、マインドフルネスの分野でよく言われています。慈悲とは、ざっくり言えば、すべての生き物の幸せを願うことです。

一見、それがなぜ人生に良い効果があるのか、ピンとこない人も多いでしょう。私もマインドフルネスを実践していた最初の頃は、慈悲の側面を無視していました。

しかし、慈悲は人間関係のあらゆる面で、ポジティブな影響を与えてくれます。

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慈悲はやり方次第で、有意義にも無意味にもなる

コンパッション(慈悲)とは何か

まずはコンパッションの意味からみていきましょう。コンパッションとは、日本語で「慈悲」と訳される言葉です。他者の苦しみを理解し、共感し、その苦しみを軽減したいと願う心を指します。

単に同情するだけでなく、積極的に行動して相手を助けようとする意欲も含まれます。

慈悲は「慈(メッター)」と「悲(カルナー)」に分けられ、ぞれぞれ意味が異なります。

メッター

メッターは、すべての生きとし生けるものが幸せであってほしいと願う心です。

自分自身だけでなく、敵対する人や見知らぬ人までも含めた、すべての人々に対して等しく慈愛の心を持つことを目指します。見返りを求めずに、ただ生きているというだけで思いやりの気持ちを向けていきます。

カルナー

カルナーは、苦しんでいる人々を救いたいと願う心です。

すべての生き物の苦しみを理解し、それに対して哀れみやかわいそうだ、と思うの気持ちを持ちます。そして、自分にできることがあれば、何か協力していきます。

ブッダ

コンパッション(慈悲)が意味がないと言われる理由

慈悲が意味がないと言われる前提から見ていきましょう。

搾取される

助けを求めている人の中には、慈悲につけこんで更なる要求をしてきたり、搾取しようとする者も存在します。

一度助けてしまうと、相手は感謝の気持ちどころか、利用されるようになったり、要求がエスカレートしたりすることがあります。

場合によっては、依存関係が形成され、自立心を失ってしまう人もいるでしょう。

自己満足に繋がる

人を助けることで、自分が他の人より優れていると感じ、優越感に浸ってしまうことがあります。しかし、真の助けとは、相手を理解し、自立を促すことです。

助けを求めている人の状況を理解しようとせず、自分が助けたという事実だけで満足してしまうのは、自己満足に繋がる偽善行為と言えるでしょう。

繊細な女性

自己犠牲に繋がる

度を越した慈悲は、自己犠牲に繋がる可能性があります。自分の時間やお金、労力を過剰に費やすことで、心身の疲労に繋がり、燃え尽き症候群を引き起こすこともあります。

さらに、相手のダメな部分を全部受け入れてしまう共依存に陥り、悪い関係をだらだらと続けてしまう恐れもあります。

人を助ける人は成功しやすい

心理学者のアダムグラントは、与える人がいかに成功しやすい理由を具体的に解説しています。グラントによれば、人は以下の3のタイプに分けられます。

  • テイカー (受け取る人)
  • マッチャー (与えて、その分受け取ろうとする人)
  • ギバー (惜しみなく与える人)

上記の3つタイプの中で、今の時代はギバーが最強という結論を出しているのです。心理学では、「返報性の原理」というものがあります。

これは、

 

  • 相手に何かをしてもらったら、お返しないといけないと考えてしまう心理のことです。

 

もらってばかりだと立場が悪くなってしまうので、差し引きゼロにして対等な関係を保とうとするわけです。

つまり、「与える」という行為が、人から信頼されたり、何かを得るためには必要なのです。

テイカーが成功しない理由

先ほどの3つの特性のなかで、テイカーはギバーを利用して多くをもらおうとします。ただ、テイカーは貰いっぱなしでお返ししようと思わないので、長く付き合うにつれて信頼が薄れていきます。

その結果、周りから嫌われたり、煙たがれたりしてしまうのです。つまりテイカーは単発で終わる関係が多く、最終的には信頼性を失ってしまいます。

実際にオランダの心理学者の研究では、テイカーのリーダーが集団のパフォーマンスを低下させることがわかっています。

その原因は、テイカーは自分一人で解決しようとするので、メンバー同士のアイデアや情報の共有が行われずパフォーマンスが下がることにあるのです。

見返りを求めてはいけない

マッチャーは「交換」の関係を好むので、見返りを求めて人に与えようとします。

しかし、もちろん人を助けてもお返しをしてくれない場合もあるでしょう。するとマッチャーは、相手に対して冷たくなったり、攻撃したりしてしまいます。

「自分はこんなに頑張っているのに、何であいつらは何もやらないんだ!」となどフラストレーションを抱えてしまうのです。

その結果、相手に対して消極的になったり、慈悲に迷いが生じてしまいます。

マッチャーは何かをもらったらしっかりと返そうとするので、テイカーより長期的な関係を築くことができ、信頼感もあります。

ただ、下心のある状態で相手に貢献しても、期待が裏切りる可能性があり注意が必要です。

アドバイスを求めることも慈悲の行為

ギバーは、謙虚であまり自己主張しないため、自信なさげに見られることが多くあります。一方で、3つタイプの中では、最も優秀であることがわかっています。

なかでも抵抗なく周りに助言を求められるところが、ギバーの魅力です。

心理学者のケイティ・リルジェンクィストは、他人からアドバイスを貰うことのメリットを4つ挙げています。

情報の獲得
相手に自分に立場になってもらえること
相手との関わりが強くなる
相手の気分がよくなる

アドバイスは一見「受け取る」行為に見えます。しかし、実際には人は誰かに必要とされたいという欲求があるものです。すなわち、人に教えを乞うことも「与える」ことの1つなわけです。

しかし、この4つのメリットは下心があると効果がなくなることが分かっています。

自分が本心でアドバイスを望んでいる時のみに、関わりが深まるのです。

コンパッション(慈悲)もやり方次第

一方で、単純に相手に与えればいいというわけではありません。

アダムグラントによれば、ギバーの性質を持つ人たちは、仕事の成績がTOPだったのですが、仕事の成績がもっとも悪いのもギバーの性質を持つ人たちだったのです。

他のマッチャーとテイカーはその中間。これはどういうことかというと、ギバーは使い方ひとつで180度変わってしまうわけです。

 

仕事の成績ランキング

  1. トップギバー
  2. テイカー、マッチャー
  3. ボトムギバー

 

底辺にいるボトムギバーの人達は、テイカーやマッチャーに利益を吸い取られています。

例えば、自分が成果を上げたはずなのに、テイカーに騙されて手柄を横取りされていたり、マッチャーに利用されたりなどです。

搾取・自己犠牲にならない本当のコンパッションとは?

与える事は確かに人の心を掴むのですが、一方で自分の印象を下げることにもつながってしまうのです。

例えば、与えまくっていると相手が人情味のある人であれば、もちろん感謝されます。しかし、これは最初の段階だけ。人間には「慣れ」という性質があります。

受け取ることに慣れてしまうと、

 

  • あの人は言えば何でもやってくれる

 

という印象になってしまいます。その結果、コンパッションや人助けが当たり前になってしまい、いくら奉仕しても感謝されなくなってしまうのです。それどころか、たまに与えない時があると「あれ、いつもはくれるのになんで?」と逆に不満を買ってしまうことも。

つまり、周りの人の基準が上がってしまうのです。人のために何かをすることが当たり前になり、何もしなければ、悪い印象を持たれるようになってしまいます。

自他に貢献する

では、なぜトップギバーは搾取されず、より大きな業績に貢献することができたのでしょうか。共通していえることは、「自分を犠牲にしてまで人に与えない」ことです。

与え続けていると、知らないうちに後に引けなくなって、YESマンになってしまいます。その結果、NOと言えなくなってしまい、誰かに利用されたりとか騙されることが結構多くなっていくのです。

「人に貢献しましょう」
「与える人が成功する時代だ!」

と言われていますが、これは相手のために自分のすべてを尽くしましょう!という意味ではありません。自己犠牲は長続きしません。いつか限界がきて、自分が潰れてしまうでしょう。

自分を大切にすることで、結果的により多くの人の役に立つのです。

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高慢は慈悲の敵

慈悲は仏教用語ですが、仏教では慈悲の行為は、人に知られないように行うほど良いと言われています。

「私はこれだけやってるんだ!」
「こんなに人助けているんだ!」

と人に誇示したり、周囲が見てるときだけ人助けをしたりすると、見栄や慢心に陥ってしまいます。それは真の慈悲とは言えません。

高慢な心は、自分が他者より優れているという錯覚を生み出し、慈悲の行為を自己顕示の手段に変えてしまいます。

もちろん人が見てるときは、慈悲の行為をするな!ということではありませんが、人が見ていても、見ていなくても慈悲を行うことが大切です。

そして、慈悲を行うことを呼吸するような、ごく当たり前のことだと思うことが大切なのです。

アクセプタンス

まとめ

コンパッション(慈悲)は、人から信頼されるために重要な要素です。しかし、自己犠牲を伴う偽善の慈悲は、長続きしません。真の慈悲とは、相手と自分の双方を大切にし、見返りを求めずに自然と行うものです。

信頼関係を築くためには、与えるだけでなく、受け入れることも大切です。互いを尊重し、感謝の気持ちを持つことで、真のコンパッションが生まれ、より深い信頼関係が築かれるでしょう。

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マインドフルネス実践者/Webライター(公認心理師運営サイトのライター)

幼稚園から小学校4年まで学校では一言も話せない状態を経験。その後15年間、対人不安、強迫観念などの症状に悩まされる。マインドフルネスと出会い、これらの症状とうまく付き合えるように。現在では、マインドフルネスの発信をしつつ、原始仏教の実践にも取り組んでいる。※仏教は超初心者です
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