マインドフルネスや心理学を勉強している方であれば、「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょう。メタ認知は自分を一歩引いた視点で観ることと説明されることがあり、マインドフルネスと類似するところも多くあります。
そこで今回は、メタ認知とマインドフルネスの違い、瞑想がメタ認知に与える影響などについて詳しく解説していきます。
Contents
メタ認知とマインドフルネスの違い
さっそくメタ認知とマインドフルネスの違いについて見ていきましょう。
メタ認知とは?
メタ認知とは、「自分の思考や感情、行動を客観的に認識し、理解する能力」を指します。つまり、「自分が今何を考え、感じ、行動しているのか」を俯瞰的に捉える力です。
具体的には以下のように定義されています。
自分の認知過程についての知識と、その知識を制御し、監視する能力(Flavell ,1979)
自分の思考や記憶、理解などについて考えること(Brow,1978)
メタ認知には、以下の要素が含まれます。
自己認識
自分の思考、感情、行動を認識する能力
メタ思考
自分の思考過程を理解し、分析する能力
メタ記憶
自分の記憶内容や記憶過程を認識する能力
メタ判断
自分の判断の正確性や信頼性を評価する能力
メタ制御
自分の思考、感情、行動をコントロールする能力
メタ認知能力は、学習、問題解決、意思決定、創造性など、様々な場面で重要な役割を果たします。
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、「今、この瞬間に意識を向け、自分の思考や感情、身体感覚を客観的に観察する態度」を指します。
過去や未来への執着を手放し、今起きていることに集中することで、心を落ち着かせ、ストレスを軽減する効果があります。
具体的には以下のように定義されています。
今この瞬間に、意図的に、評価判断せずに注意を向けること(Kabat-Zinn ,1994)
現在の瞬間の経験に、意図的に、非判断的に、受容的に注意を向けること(Jon Kabat-Zinn,2003)
マインドフルネスには、以下の要素が含まれます。
集中
意識を今この瞬間に集中する能力
受け入れ
自分の思考や感情、身体感覚を批判せずに受け入れる能力
観察
自分の内外の体験を客観的に観察する能力
判断しない
自分の思考や感情を判断せずに、ただ眺める能力
マインドフルネスは、瞑想やヨガなどの実践を通して培うことができます。
メタ認知とマインドフルネスの違い
メタ認知とマインドフルネスは、密接な関係がありますが、いくつかの違いがあります。
意味
メタ認知は、自分の認知過程を理解し、コントロールする意味があります。一方、マインドフルネスは、現在の瞬間の体験に意識を向けることにフォーカスしています。
対象
メタ認知は、自分の思考、感情、行動を対象とします。一方、マインドフルネスは、自分の思考、感情、身体感覚だけでなく、周囲の環境も含めたすべての体験を対象とします。
目的
メタ認知は、学習や問題解決などのパフォーマンスを向上させることを目的としています。一方、マインドフルネスは、ストレスを軽減し、心を落ち着かせることを目的としています。
つまりざっくり言えば、メタ認知は認知過程の理解で、マインドフルネスは今この瞬間に注意を向けることであるといえるでしょう。
メタ認知とマインドフルネスの違いを表にすると以下のようになります。
項目 | メタ認知 | マインドフルネス |
---|---|---|
対象 | 思考、感情、行動 | 思考、感情、身体感覚、周囲の環境 |
焦点 | 認知過程の理解とコントロール | 現在の瞬間の体験 |
目的 | パフォーマンス向上 | メンタルヘルスの向上、心の平穏 |
マインドフルネスを行うとメタ認知が鍛えられる理由
マインドフルネスを行うと、メタ認知が鍛えられると言われています。その理由は、以下の3つです。
自己観察
マインドフルネスでは、自分の思考や感情を客観的に観察する練習をします。この練習によって、自分の心の状態をよりよく認識できるようになり、メタ認知能力が向上します。
集中力
マインドフルネスでは、意識を今この瞬間に集中する練習をします。この練習によって、自分の思考や感情に流されずに、客観的に観察できるようになり、メタ認知能力が向上します。
評価判断しない
マインドフルネスでは、自分の思考や感情を批判せずに受け入れる練習をします。この練習によって、自分の心の状態を客観的に捉えられるようになり、メタ認知能力が向上します。
メタ認知が鍛えられるマインドフルネス瞑想
メタ認知能力が向上すると、より効果的にマインドフルネスを実践することができます。
オープンモニタリング瞑想
オープンモニタリング瞑想は、メタ認知能力を鍛える効果的な瞑想法の一つです。
この瞑想では、自分の思考、感情、身体感覚、周囲の環境など、あらゆる体験を客観的に観察し、ラベル付けせずに受け入れることに焦点を当てます。
オープンモニタリング瞑想の手順
- 座りやすい姿勢をとる: 椅子や床に座り、背筋を伸ばしてリラックスします。
- 目を閉じる: 目を閉じ、呼吸に意識を向けます。
- 呼吸を観察する: 息を吸ったり吐いたりする感覚を、ただ観察します。
- あらゆるものを観察する: 思考や感情、感覚、音、匂いなどあらゆるものを観察していきます。す。
- 判断しない: 「良い」「悪い」「心地よい」「不快」などのラベルを付けずに、ただ客観的に観察します。
- 注意が散ったら: 注意が散って他のことに意識が向いたら、優しく意識を注意の対象に戻します。
- 続ける: 5分、10分、20分など、自分のペースで瞑想を続けます。
オープンモニタリング瞑想の注意点
オープンモニタリング瞑想は、誰でも簡単に実践できる瞑想方法ですが、いくつか注意点があります。
・無理をしない
最初から長時間行う必要はありません。数分から始めて、徐々に時間を延ばしていきましょう。
・批判しない
自分の思考や感情を批判せず、ただ客観的に観察することが大切です。
・期待しない
瞑想の効果はすぐに現れるわけではありません。継続することで、徐々に効果を実感できるようになります。
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ヴィパッサナー瞑想
ヴィパッサナー瞑想は、2500年以上前にゴータマ・ブッダによって発見された瞑想法で、日本語では「内観」や「洞察」という意味です。
この瞑想は、今この瞬間に起こっている身体感覚や感情、思考などを客観的に観察することに焦点を当てます。観察を通して、これらの心の動きがどのように変化し、どのように相互作用しているのかを理解していきます。
ヴィパッサナー瞑想の手順
ヴィパッサナー瞑想の1つの方法としては、呼吸と腹部の動きを観察していきます。具体的には以下の手順で行います。
1. 姿勢
背筋を伸ばして座り、両足を床に平らにつけます。目は軽く閉じ、手のひらを上にして膝の上に置きます。
2. 呼吸
自然な呼吸に意識を向け、息を吸ったり吐いたりする感覚を観察します。鼻孔のあたりや胸の動きに集中すると良いでしょう。
3. 腹部の動き
お腹が膨らんだり、しぼんだりする感覚を観察します。息を吸う時にお腹が膨らみ、吐く時にお腹がしぼむことに意識を向けます。
4. ラベリング
お腹の動きが変化するたびに、「膨らみ」、「しぼみ」と心の中で唱えます。頭の中で言葉が浮かばなくても、お腹の動きに意識を向けるだけで構いません。
5. 観察
思考や感情が浮かんでも、それに反応せず、ただ観察します。批判したり、分析したりせず、ただ客観的に眺めるように心が
- 集中力が途切れたら、優しく意識を呼吸と腹部に戻します。
- 毎日10分から20分程度、継続して行うことが重要です。
- 無理せず、自分のペースで練習しましょう。
脱中心化
脱中心化 は、思考や感情を客観的に観察するメタ認知能力を鍛えるのに効果的な瞑想法です。これは、自分自身を客観的な視点から捉え、思考や感情に巻き込まれない心の状態を養います。
脱中心化瞑想の3つのポイント
- 観察者になる: 思考や感情を客観的に観察する「観察者」の意識を育てます。
- ラベル付け: 思考や感情を「怒り」「不安」など、言葉でラベル付けします。
- 執着しない: 思考や感情に囚われず、ただ観察し、通り過ぎさせていきます。
脱中心化瞑想の注意点
- 最初は難しいと感じるかもしれませんが、毎日少しずつ練習 することが大切です。
- 思考や感情に批判や判断 を加えず、ただ観察 することに意識を向けましょう。
- 集中力が途切れたら、優しく意識を呼吸に 戻しましょう。
脱中心化は、メタ認知能力を鍛え、より深い洞察力 を得るための効果的な方法です。日々の生活に取り入れていきましょう。
まとめ
マインドフルネスを実践することで、自己観察、集中力、評価判断しない能力が向上し、メタ認知能力を鍛えることができます。
メタ認知とマインドフルネスを理解し、実践することで、学習や問題解決、ストレス軽減など、様々な場面で効果を得られるでしょう。ぜひまずは短い時間からでも実践してみくださいね。