マインドフルネス瞑想には、
集中瞑想(フォーカスアテンション)
観察瞑想(オープンモニタリング)
の2つ瞑想法があります。
集中瞑想では、注意を一点に集中させ、観察瞑想では広い意識を持ちながら、あらゆる出来事を受け入れていきます。
この記事では、それぞれの瞑想法の違いや使い分けについて、見ていきます。
Contents
止観とは?
集中瞑想と観察瞑想は、仏教の
- 止観(しかん)
という考え方がベースになっています。
止観とは、「止」と「観」でそれぞれ以下の意味があります。
止行=思考を止める、集中させる
観行=観察する
仏教は悟りを得るための修行法です。
真理、つまり物事をありのままに観るには、思考を止めることと、観察することの2つが大切にされています。
私たちは、どうしても思考というフィルターを通して現実を見てしまいます。すると、物の見方が偏り、真理を”体感”をすることができなくなってしまうのです。
まずは集中力を高めてから、観察するのが一般的
生まれた時から思考を続けている私たちは、そう簡単に思考を止めることはできません。
そこで、「止」の瞑想であるサマタ瞑想を続けて、集中力を高めてから、「観」の瞑想であるヴィパッサナー瞑想に移行していきます。
一方で、ヴィパッサナー瞑想のみであっても、集中力を高める要素があるとする仏教の流派もあります。
こうした流派では、サマタ瞑想はほどほどにして、始めからヴィパッサナー瞑想に取り組みます。
どちらも集中も観察もする
集中瞑想・観察瞑想それぞれの違いを図にすると、以下のようになります。
集中瞑想・観察瞑想と言葉が分けられていますが、実際にはどちらも「集中も観察も」行います。
集中瞑想は「観察瞑想のための訓練」なので観察もします。一方で観察瞑想は、集中しなければできないため、集中をします。
両者の違いは、注意を集めるか、広げるかの違いです。そのため意味としては、英語のフォーカスアテンション、オープンモニタリングの方が分かりやすいかもしれません。
集中瞑想(フォーカスアテンション)とは?
そして、止観の考え方はマインドフルネスの分野でも取り入れられ、集中瞑想(フォーカスアテンション)と観察瞑想(オープンモニタリング)として研究が続けられてきました。
注意を1点に集中させる
マインドフルネスで用いられる集中瞑想は、どこか一点に注意を向け続ける瞑想方法になります。
集中瞑想は、心がさまよう状態を和らげるさ効果があります。
集中力が向上することで、日常生活や仕事においても効率的に作業ができるようになります。
注意を向ける対象としてよく用いられるのが、「呼吸の感覚」です。例えば、
- 空気が鼻孔に当たる感覚
- 胸が膨らんだり縮んだりする感覚
- お腹が膨らんだり縮んだりする感覚
などです。呼吸の感覚のなかで、もっとも感覚を感じやすい場所を決めて、その感覚を通して今ここに気づきを向けていきます。
この場所をアンカーと呼び、船が流されないよう繋ぎとめておくように、注意がそれた時にいつでも今ここに戻ってこれるようにします。
サマタ瞑想との違いは、必ず注意を身体の感覚に向けること。
仏教で行われるサマタ瞑想では、様々な方法があり、呼吸へ集中するものもあれば、死を念じたり、無常を念じたりするものもあります。
また集中瞑想だからといって、全く「観察」をしないわけではありません。
注意の対象1つに絞るだけであって、その対象に観察や気づきを向けていきます。
集中瞑想のやり方
- 場所の選ぶ: 静かで落ち着いた場所を選びます。騒がしさや人からの干渉を受けない1人になれる場所で行うのが最適です。
- 姿勢を正す: 椅子に座るか、床に座布団やクッションを用意して座ります。背筋を伸ばし、リラックスした状態を保ちます。目を閉じても良いし、軽く開けた状態を保っても構いません。自分にとって心地よい状態を選びます。
- 呼吸に意識を向ける: 注意を呼び戻しながら、自然な呼吸に意識を向けます。息の流れや空気の感触など、呼吸に関する感覚を感じるようにします。
- 呼吸の感覚を観察: 呼吸が入ってくる瞬間と出ていく瞬間に注意を向け、その感覚を観察します。呼吸が鼻や胸などのどこを通るかを感じます。
- 気が散ったら: 心が散漫になったり、他の思考が浮かんできたりしたら、そのことに気づいて静かに呼吸に戻します。評価せずに、ただ呼吸に戻ることを繰り返します。
- 終了: 終了時にはゆっくりと目を開け、周囲の状況に注意を向けます。ゆっくりと立ち上がり、瞑想の経験を体感しながら日常に戻ります。
最初は5分から始めて徐々に時間を延ばしていくことをおすすめします。10分から15分程度が初めての人に適しています。
観察瞑想(オープンモニタリング)とは?
観察瞑想とは、注意を広げて今起きていること全てを観察する瞑想です。
観察瞑想は、別名オープンモニタリングと呼ばれます。これは瞑想の特徴として、注意をオープンに広げるためです。
特定の対象やテーマにフォーカスするのではなく、現在の状態や感覚全てを受け入れつつ観察します。
例えば、
- 身体の感覚
- 思考
- 感情
- 音や臭い
など外の刺激や内側の思考や感情など、どんな要素でも受け入れながら観察します。
観察瞑想はヴィパッサナー瞑想と同じものとされることが多いですが、必ずしもそうではありません。
ヴィパッサナー瞑想は、観察瞑想のようにあらゆるものを観察するものもあれば、注意の対象を決めて身体の動きを実況中継するやり方もあります。
観察瞑想のやり方
- 静かな場所の選ぶ: 静かで安定した場所を選びます。必ずしも座る必要はありませんが、座る場合には、椅子や床にクッションを用意します。
- 姿勢の伸ばす: 背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を取ります。目は閉じてもよいし、軽く開けてもよいです。
- 注意を広げる: 注意を呼び戻しながら、周囲の音や感覚、身体の感じるものなど、広い意識を持ちながら受け入れます。
- あらゆる感覚を観察: 思考・感情・感覚など、どんな体験が現れても評価せずに観察します。それらがどのように表れて、どのように変化しているかを注意深く観察します。
- 終了: 終了時にはゆっくりと目を開け、周囲の状況に注意を向けます。ゆっくりと立ち上がり、瞑想の経験を体感しながら日常に戻ります。
まとめ
集中瞑想と観察瞑想は、仏教の考え方である「止観」を取り入れた瞑想法です。
集中瞑想は、注意を一点に集中させることで集中力やストレス軽減を促進し、心の安定をもたらします。
一方で、観察瞑想は、感じるすべての出来事を客観的に受け入れつつ観察をしていきます。こちらも気付きを深め、ストレスや不安の軽減に繋がります。
集中瞑想と観察瞑想は、マインドフルネスの分野でも重要な役割を果たしており、個人の目標に応じて選択できる方法です。
MBSRなどの瞑想プログラムでは、1つの瞑想で集中瞑想と観察瞑想を行うこともあります。ご自身にあった実践方法を見つけてみてくださいね。
・思考は観察の邪魔になる
・集中力は観察に必要
・止観とは何か?