慈悲の瞑想って?効果やフレーズ(言葉)・種類別のやり方とは

当エントリが解決するお悩み

・思いやりの気持ちを育てたい
・慈悲の瞑想のやり方を知りたい
・優しい性格になりたい

疑問

 

 

 

 

 

マインドフルネスや仏教の世界では、

「すべての生命を慈しむこと」

が大切にされています。

私たちはつい自我に囚われて、自分の感情を優先させる傾向があります。

しかし、自分を優先させて行動した結果、かえって自分の首を絞める結果に陥るケースも少なくありません。例えば、家族と喧嘩をしたあと、重い空気が流れて気まずくなったり。こんな空気では家にいるにも関わらず、気が休まらないでしょう。

そこで大切なのが、慈悲の気持ちです。結局は自分は周りの環境に生かされており、その環境に貢献していくことで自分の幸福度も高まっていきます。

この慈悲の気持ち育む方法が「慈悲の瞑想」です。当記事では、慈悲の瞑想について初心者でもわかりやすく解説をしていきます。

慈悲の瞑想ってなに?

そもそも、慈悲とは何を意味するのでしょうか。マインドフルネスの源流である初期仏教では、慈悲とは以下の4つの気持ちのことであると説かれています。

  • 慈(メッター)
  • 悲(カルナー)
  • 喜(ムディター)
  • 捨(ウペッカー)

それぞれ解説していきますね。

慈(メッター)

慈とは、慈しみのことです。慈しみの気持ちを分かりやすく解説すると、

親友や我が子に抱く
”ただ幸せであってほしい”

という気持ちになります。仏教では、慈しみのことをメッター(Mettā)と呼び、友情という意味で用いられていました。すべての生命を友人のように思い、見返りを求めずに、

「幸福を願う気持ち」
「安楽を与えたいと思う気持ち」

が慈しみなのです。

悲(カルナー)

悲とは、生命を哀れむことです。哀れむとは、

親が子どもに抱く
”苦しみを取り除いてあげたい”

と思う気持ちになります。仏教では、哀れみのことをカルナー(karuṇā)と呼び、人を助けてあげたいという優しい気持ちのことを意味します。一切皆苦という言葉がありますが、仏陀は、生きること「苦」であると説きました。

・生命を維持すること
・老いていくこと
・病にかかること
・死ぬこと

などなど。

これらの苦しみの中にある生命に対して、哀れみを抱くことが悲なのです。

喜(ムディター)

喜とは、他の生命がうまくいっていることを自分のことのように喜ぶことです。

・友人の昇進を喜ぶ
・子どもの大学合格を喜ぶ
・兄弟の結婚を喜ぶ

など、ここでいう成功とは、一般的な意味も含まれます。

ムディターは嫉妬の反対の心の働きで、妬みや嫉み、僻みなどの感情を減らしてくれます。こうした姿勢で生きていると、自分が成功した時も妬まれることなく、他人から喜ばれるようになります。

捨(ウペッカー)

捨とは、すべての生命は平等であると観ることです。

どんな生き物も苦しみの中ので、
なんとか工夫して生きているんだと、
客観的に偏見なく観察することを意味します。

私たちは、あの人は何も悩んでなさそう、あの人は好き、あの人は苦手など、あの人は怖そうなどと何かとラベルを貼って人のことを判断してしまいます。

このように他人を自分の思い込みで評価判断することで、比較や慢心、落ち込みなどが生まれて心が曇ってしまうのです。

そこで、自分の偏見を捨てて、他の生命の平等に観ることで、どんな相手とも対等に接することできるようになります。

慈悲の瞑想の効果

それでは、慈悲の瞑想にはどのような効果があるのでしょうか。科学的な視点から見ていきましょう。

思いやりが高まる

ウィスコンシン大学マディソン校の研究[1]では、わずか2週間の「慈悲の瞑想」トレーニングで、「他人の苦しみを理解して和らげたいという気持ちを養うことができる」と報告されています。

24人の参加者に2週間にわたって毎日30分間の「慈悲の瞑想」を行ってもらいました。

その結果、トレーニングを行った参加者は「利他的な行いが増え、苦しみを受け入れられる」ようになったとされています。

この実験をおこなった研究者によると、

思いやりの瞑想を実践することは、「重み」を徐々に増やして筋肉を動かすようなものでした。苦しみがあった時に自分を哀れむのではなく、物事を批判的に見ずに、慈悲の気持ちで対応することが回復力につながる

つまり、自分に何らかの苦しみがあったときに、それを乗り越えるだけの心の回復力を鍛えられると考えられています。瞑想が筋トレの役割を果たしているわけです。

メンタルが安定する

クリスティーナら(2020)の研究では、ドイツの大学生110名を対象に、「慈悲の瞑想」と「メンタルヘルス」の関わりを調べました。この研究では、110名の大学生を半分に分け、

慈悲の瞑想を受ける群
受けなかった群

を5か月間比較し、慈悲の瞑想の効果を調べました。また、その後1年間のフォローアップを行い、長期的な効果についても調査を行いました。この研究では、

・うつ傾向
・不安
・ストレス

の3つ指標で、メンタルヘルスを調べています。それぞれの結果を見ていきましょう。

・うつ傾向の低下
まずは、うつ傾向との関係を見ていきましょう。結果は以下のグラフの通りです。

慈悲の瞑想とうつ

このように、慈悲の瞑想を行った群の方が、うつ傾向が下がっていることがわかります。日頃から慈悲の瞑想を行うことで、気分の落ち込みを改善できると言えそうです。

・不安の低下
続いて慈悲の瞑想と不安との関係を見ていきましょう。結果は以下の通りです。

不安の低下

このように慈悲の瞑想を行った群の方が、不安が少ないことがわかります。私自身も効果を実感しており、慈悲の瞑想を行った後は、とても不安感が少なくなると感じますね。特に不安で寝れない!という時は、おすすめですね。

・ストレスの低下
最後に、慈悲の瞑想とストレスとの関係を見ていきましょう。結果は以下の通りです。

慈悲の瞑想とストレス

このようにストレスについても、慈悲を行った群の方が少ない値が報告されました。つまり、慈悲の瞑想を5か月間を行うことで、長期的にメンタルヘルスが安定すると考えらえます。

https://link.springer.com/article/10.1007/s12671-020-01375-w

ポジティブ感情を高める

ステファン・G・ホフマンら(2015)の研究では、10人の参加者に対象に、慈悲の瞑想と気分障害との関わりを調べました。

具体的には、

・12週間
・1日15~20分の慈悲の瞑想を行う
週に1回、60分間のセッションを行う

というものでした。今回は、気分障害に関わる指標として、

・畏敬の念
・思いやり
・喜び

の結果をご紹介します。

・畏敬の念が高まる
まずは、畏敬の念の結果からみていきましょう。畏敬の念とは、簡単に言うと、”自分を超えたような、大きなものとの一体感”のことを意味します。この値が高いと、体内の炎症を抑えたり、幸福感を高めることわかっています。

結果は以下のグラフの通りです。

このように、実験後の方が、グラフが高くなっていることがわかります。つまり、慈悲の瞑想を4か月実践することで、畏敬の念が培われると言えそうです。

・思いやりが高まる
先ほども別の研究でご紹介しましたが、この研究でも思いやりが高まることが分かっています。結果は以下の通りです。

このように、こちらも実験後の方がグラフが伸びていることがわかります。慈悲の瞑想を日々行うことで、思いやりの心も育まれると考えられます。

前述の通り、特に道徳観のない人がマインドフルネスを高めると、攻撃性が増す!という話もあるので、思いやりの精神は大切したいところ。

・喜びが高まる
最後に喜びとの関わりを見ていきましょう。結果は以下の通りです。

このように、喜びについても実験後の方がグラフが伸びていることがわかります。慈悲の瞑想する行うことで、喜びが増し、幸福感も高まっていくと言えそうです。

その他の効果

スタンフォードで慈悲の研究をしているエマセッパラ博士は、以下のサイトで慈悲の瞑想の効果を18つ挙げています。

Psychology Today: 18 Science-Backed Reasons to Try Loving-Kindness Meditation!

以下に、当エントリで紹介してない効果をまとめると、

  • 迷走神経が刺激される(副交感神経が活発になる)
  • 慢性痛を減らす
  • 偏頭痛を減らす
  • PTSDの緩和
  • テロメアを長くする(寿命が延びる)
  • レジリエンスを高まる
  • 親切さが高まる
  • 共感力を高める
  • 自己批判の抑制

これらの効果があるとされています。

もちろん、まだ研究段階のものあり、確実にすべての効果が得られるというわけではありません。そのため、参考程度にとどめておくようしましょう。

それでは、次から具体的な慈悲の瞑想のやり方を見ていきましょう。

【種類別】慈悲の瞑想のやり方

テーラワーダ仏教

テーラワーダ仏教とは、スリランカやタイなどで発展した仏教になります。別名、上座部仏教と呼ばれており、お釈迦様の教えに近いものとされています。

今回は、スリランカのお坊さんで、日本で活躍しているスマナサーラ長老の慈悲の瞑想をご紹介します。

目を閉じ、以下のフレーズを気持ちを込めて唱えていきます。もしくは心の中で念じていきます。

私は幸せでありますように
私の悩み苦しみがなくなりますように
私の願いごとが叶えられますように
私に悟りの光が現れますように
私は幸せでありますように(3回)

私の親しい生命が幸せでありますように
私の親しい生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の親しい生命の願いごとが叶えられますように
私の親しい生命に悟りの光が現れますように
私の親しい生命が幸せでありますように(3回)

生きとし生けるものが幸せでありますように
生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように
生きとし生けるものの願いごとが叶えられますように
生きとし生けるものに悟りの光が現れますように
生きとし生けるものが幸せでありますように(3回)

-日本テーラワーダ仏教協会 慈悲の瞑想 より引用

この中で、「悟りの光」がわかりにくい方は、「智慧」に置き換えてもOKです。

日本テーラワーダ仏教協会では、上記の慈悲の瞑想は「携帯バージョン」として扱われています。
しっかりやりたい方は、フルバージョンも参考にしてみてください。

科学式

続いて、心理学的に用いられる慈悲の瞑想のオーソドックスなやり方をご紹介します。

目閉じて快適に座りましょう。

練習中に声に出して言うか、頭の中で念じる4つのフレーズは、通常、次のとおりです。

①自分の幸せを願う

慈悲のフレーズを自分自身に向けることから始めます。

私は幸せでありますように。
私は平安でありますように。
私は健やかでありますように。
私は苦しみから解放されますように。

②親しい人

次に、親しい人々に慈しみを向けます。1人に固定する必要はありません。家族、友人、恋人、職場の人たちが集合写真のように集まっているところをイメージし、以下のフレーズを唱えます。

私の親しい人々幸せでありますように。
私の親しい人々平安でありますように。
私の親しい人々健やかでありますように。
私の親しい人々苦しみから解放されますように。

③中立

次に、中立であると感じる人、つまり好きでも嫌いでもない人達をイメージします。その人に慈悲を向けていきます。

私の知人たちが幸せでありますように。
私の知人たちが平安でありますように。
私の知人たちが健やかでありますように。
私の知人たちが苦しみから解放されますように。

④嫌いな人

次に、あなたが嫌いな人やあなたが対処するのに苦労している人に考えを向けてください。

私の嫌いな人たちが幸せでありますように。
私の嫌いな人たちが平安でありますように。
私の嫌いな人たちが健やかでありますように。
私の知人たちが苦しみから解放されますように。

⑤すべての生命

最後に、メッタを普遍的にすべての人に向けます。すべての生命が幸せになりますように。

全ての存在が幸せでありますように。
全ての存在が平安でありますように。
全ての存在が健やかでありますように。
全ての存在が苦しみから解放されますように。

Google式慈悲の瞑想

①大切な人をイメージ

あなたにとって大切な人を思い浮かべましょう。その人の姿を思い描きます。

お望みなら、その人の写真やビデオを使ってもかまいません。  

②私とまったく同じ

今度は、以下の台本をゆっくり自分に読み聞かせましょう。

文が終わるごとに間を置いて、繰り返してください。

この人は私とまったく同じで、体と心をもっている。
この人は私とまったく同じで、気持ちや情動、考えをもっている。
この人は私とまったく同じで、これまでの人生で、悲しかったり、がっかりしたり、怒ったり、傷ついたり、うろたえたりしたことがある。
この人は私とまったく同じで、これまでの人生で、身体的な痛みや苦しみも情動的な痛みや苦しみも経験してきた。
この人は私とまったく同じで、痛みと苦しみから解放されたいと願っている。
この人は私とまったく同じで、健康で人に愛され、充実した人間関係をもちたいと願っている。
この人は私とまったく同じで、幸せになりたいと願っている。  

それでは、何か願いが湧き起こるのにまかせましょう。  

③幸福を願う

この人が人生のさまざまな困難を乗り切れるような、強さや資質、情動的はサポート、社会的なサポートを得られますように。  この人が痛みや苦しみから解放されますように。この人が幸せになりますように。

準備ができたら、目を開けてください。 

動画でも解説しています!文章だと分かりづらいという方は参考にしてみてください。

やってみた感想

私はここ5年間ほど、慈悲の瞑想をほぼ毎日を行っています。この5年間で慈悲の瞑想で得られた効果は以下の通りです。

1.怒りにくくなった

私はやや短気で、子どものころから些細なことで怒りを感じていました。

大人になっても、人間関係で失敗したり、目の前の仕事にストレスを感じたりすることが多い傾向にありました。

しかし、慈悲の瞑想を始めてからというもの、「まぁ相手も苦しんでいるし・・・」と達観した視点が身について、怒りが湧きにくくなったように思います。

2.謙虚になった

自分で言うのおこがましいですが、エゴや見栄のために行動することが減り、慢心に支配されなくなったなと感じます。

様々なつながりによって、今自分が生きていることを自覚することで「俺がえらい!」といった感覚が薄れましたね。

3.自己受容が進んだ

慈悲の瞑想を行うことで、皆自分と同じように”苦しんでいるんだ”と思えるようになりました。

その結果、他人と比較して、「ああなりたい」「こうなりたい」と妄想することがなくなり、今の自分にできることをやれば、それでOKと感じられようになりました。

まとめ

慈悲の瞑想は、すべての生き物を慈しむ瞑想です。他の生き物との関わりによって、自分の命が成り立っています。

そのつながりは、自分と同じように「幸福になりたい」「苦しみをなくしたい」と思っています。

自分や他の生き物に対して、慈しみや哀れみの気持ちを育むことで、”つながり”と円滑な関係を構築することができるでしょう。

さらに、それだけではなく、体の痛みを減らしてくれたり、リラックス効果があったり、自己批判を和らげるなど心身ともに健康な状態にも近づいていきます。

まずは5分など短い瞑想からでOK。慈悲の瞑想を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考記事
あがり症の克服は「マインドフルネス」で決まり

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
teshy
マインドフルネス実践者/Webライター(公認心理師運営サイトのライター)

幼稚園から小学校4年まで学校では一言も話せない状態を経験。その後15年間、対人不安、強迫観念などの症状に悩まされる。マインドフルネスと出会い、これらの症状とうまく付き合えるように。現在では、マインドフルネスの発信をしつつ、原始仏教の実践にも取り組んでいる。※仏教は超初心者です
詳しいプロフィールはこちら