マインドフルネス瞑想を実践すると、性格は本当に変わるのでしょうか?日々のストレスや不安に悩んでいる方、自分の性格をより良くしたいと考えている方にとって疑問に思われる方も多いでしょう。
本記事では、科学的な研究結果をもとに、マインドフルネスが性格に与える影響について詳しく解説していきます。
Contents
マインドフルネスで性格は変わる?
マインドフルネスで性格は変わるのか、科学的な論文からみていきましょう。
自主性・協調性・自己超越が高まる
Campanellaら(2014)[1]の研究では、41 名を対象にマインドフルネス瞑想が以下の性格特性に与える影響を調べました。
- 自己志向性
- 協調性
- 自己超越
自己志向性とは、状況に応じて行動を自己決定し、調節できる能力のことです。つまり自主性と考えてよいでしょう。
自己超越は人の精神的な領域(必ずしも宗教的ではない)に関係します。この特性が高い人は、他人や世界とのつながりを感じており、人生には自分よりも大切なものがあると認識しています。
参加者を長期間 (1 年) にわたって追跡し、24 か月にわたって、3 つのマインドフルネス瞑想トレーニングコースをうけてもらいました。 15 人が対照群(瞑想トレーニングを受けない群)として選択されました。
その結果、対照群に比べて、瞑想トレーニングを受けた群は3つの性格特性が大幅に高まったことがわかりました。
誠実さが高まり神経質が減る
Tamara L. Giluk(2009)[2]の研究では、マインドフルネスとBig5 の性格特性の関係について、29 件の研究の 32 サンプルから得られた結果を精査しました。
Big5とは、人間性格を5つに分類する性格分析でもっとも信憑性が高いとされています。具体的には、以下の5つの特性があげられます。
1. 開放性 (Openness to Experience)
- 新しい経験やアイデアに対して好奇心旺盛で、積極的に取り入れようとする傾向
- 想像力豊かで、創造性が高い
- 芸術や文化に関心を持つ
- 複雑な概念を理解するのが得意
- 型にはまらない考え方を好む
2. 誠実性 (Conscientiousness)
- 責任感があり、計画的に行動する
- 勤勉で、努力家
- 秩序正しく、几帳面
- 規則やルールを守る
- 目標達成のために努力を惜しまない
3. 外向性 (Extraversion)
- 社交的で、活発
- 人と話すことが好き
- エネルギッシュで、行動的
- 刺激的な環境を好む
- リーダーシップを発揮する
4. 協調性 (Agreeableness)
- 親切で、思いやりがある
- 他者と協調することを大切にする
- 信頼できる
- 許し上手
- 争いを避ける
5. 神経症傾向 (Neuroticism)
- 不安や心配を抱きやすい
- 感情的になりやすい
- ストレスに弱い
- ネガティブな思考に陥りやすい
- 孤独を感じやすい
その結果、すべての特性がマインドフルネスとかなりの関係を示しており、そのなかでも
- 神経症傾向
- 誠実性
はもっとも強い関係を示したことがわかりました。
つまり、マインドフルネスを行なうと、不安やストレスに強くなり、責任感をもって計画的にコツコツ物事をこなす傾向が強くなると言えるでしょう。
その他の研究
Crescentiniら(2018)[3]の研究では、多発性硬化症(MS) の患者33人を対象に、心理的幸福感とに性格に与える影響を調べました。
被験者のうち17人には、8週間の瞑想トレーニングコースを受けてもらい、残りの16人は対照群で瞑想トレーニングを受けないでもらいました。その結果、瞑想トレーニングを受けた群は
- 自主性
- 協調性
- 誠実性
が高まることがわかりました。これらは先ほどご紹介した2つの研究結果と同じ傾向を示しています。自主性・協調性・誠実性の部分は性格が変わると考えられます。
なぜマインドフルネスで性格が変わるのか
マインドフルネスが性格を変えるメカニズムは、まだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの研究結果から、以下のような可能性が考えられています。
脳の活性化
マインドフルネスを実践することで、前頭前野や海馬などの脳の領域が活性化することがわかっています。これらの領域は、思考、感情、意思決定などの機能に関与しています。
特に前頭前野は理性的な活動を司っているとされ、感情コントロール力が高まり、不安感の軽減や誠実性の向上に繋がると考えられます。
セルフアウェアネスの向上
マインドフルネスを実践することで、自分の思考や感情を客観的に観察できるようになります。これは、自己認識の向上につながり、自分の性格や行動パターンをより深く理解できるようになります。
その結果、脳の活性化と同じように感情コントロール力が上がり、不安感の軽減や誠実性の向上に繋がると考えられます。
自己受容が深まる
マインドフルネスを実践することで、ありのままの自分を受け入れることができるようになります。これは、自己受容の促進につながり、自分自身をより肯定的に捉えられるようになります。
自分の不完全さを受け入れられるようになるため、人に助けを求められるようになり、協調性が高まると考えられます。
マインドフルネスで性格を変える方法
ここではマインドフルネスで性格を変えるため実践方法について解説していきます。
継続する
マインドフルネスの効果を最大限に引き出すためには、継続することが非常に重要です。毎日少しでも良いので、マインドフルネスを実践する習慣を身につけることが大切です。
毎朝5分間、瞑想を行う
1時間に1回、深呼吸をする
食事や散歩など、日常の活動中に意識を集中させる
マインドフルネスに関する書籍やアプリを活用する
最初は難しいと感じるかもしれませんが、毎日続けることで、徐々にマインドフルネスが日常に溶け込んでいくようになります。
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運動と組み合わせる
マインドフルネスと運動を組み合わせることで、心身の健康を同時に高め、より良い性格へと変化することができます。Stephanら(2018)の研究[4]では、約6000人のデータを分析し、運動量と性格の関係について調査しました。
1990年代に40~50代だった男女約6000人に性格テストを行い、毎日の運動量を記録。約20年後に再び同じ性格テストを実施しました。
その結果、普段の運動量の少ない人は、ビッグファイブの
- 誠実性
- 外向性
- 協調性
- 開放性
の得点が低かったことが分かりました。
この研究では、運動の負荷は関係なく、あくまでも運動量の低下が性格の悪化に関係していると報告しています。そのため、動きをともなうマインドフルネスである「マインドフルムーブメント」や「マインドフルウォーキング」などに取り組めば、相乗効果でより性格改善に役に立つかもしれません。
自分の性格を受け入れる
逆説的に感じるかもしれませんが、「今の自分の性格をダメだ!」思うことは、マインドフルネス的ではありません。マインドフルネスは、
- いい悪いという評価判断を手放して、今この瞬間の
体験をありのままに観察することです。
つまり、今の自分性格はダメだ!と思うこと自体、評価判断につながり、結果としてマインドフルネスの効果が薄れてしまうのです。
マインドフルネスを実践する際中は、性格を変えたい!など目的意識は手放して、今ここの体験をあるがままに観察することに集中しましょう。結果論として、徐々に悪い性格が変わっていく可能性があると考えるとよいでしょう。
まとめ
マインドフルネスの実践は、自主性、協調性、誠実性などの性格特性を向上させ、不安感の軽減や自己受容につながることが研究で示されています。
継続的な実践と運動との組み合わせが、性格改善に有効です。これらの方法を取り入れ、より良い性格を育むための実践を始めましょう。