ここぞという時にミスをしてしまう、肝心な場面で失敗してしまう・・・「本番に弱い自分を克服したい」という理由から心理学を学ぶ人は少なくありません。
実際に私もその一人でした。特に、本番や大事な場面に差し掛かると心臓が激しく踊りはじめ、取り返しのつかない状態に。一方で、心理学や瞑想を学ぶことによってある程度克服することができました。
今回は心理学ライター歴5年で、不注意を克服した私が大事なところで失敗しないための方法を解説していきますね。
Contents
注意力が足りない
よくミスをする人は注意力が足りないと、指摘されることがありますが、「注意力」とはなんのことなのでしょうか。
この意味を理解しなくては、「集中しろ!」といったアドバイスは無意味になってしまいます。
まず大前提として、
- 「人は世界を目で見ているようで見ていない」
ことを抑えておく必要があります。これはここ数十年で研究が加速している認知科学の分野で判明していること。私たち目で見たものがそのまま認識されると考えがちですが、実際には、目から入った情報を脳に伝えることで初めて目の前にあるものを認識できます。
「見ている」と「観察している」の違いでもありますが、単純に見えているだけでは、脳に情報として残りづらくなってしまいます。
つまり、人間は注意を向けている対象しか「認識」することができないんですね。
ゴリラに気づけるか?
1つここでテストを行ってみましょう。
これは、ハーバード大学の研究室が作成した動画による実験です。この動画では、黒いシャツと白いシャツを着たチームがそれぞれバスケットボールを持って、仲間にパスを出し合っています。
この動画をみて「白いユニフォームのチームがパスを出した回数」を数えてください。準備ができたら、以下の動画でテストしてみましょう。
さて、いかがだったでしょうか。実はこのテストは正確にパスを出した回数を数えられたかどうかではなく、「ゴリラの存在に気づけたかどうか」を測ったもの。
パスに注意を向けさせた状態でも、人は違和感に気づくことができるのか?というのが実験に趣旨だったわけです。
もう一度、動画を見ればわかりますが、ゴリラは画面の隅っこで見切れているレベルではありません。時折、画面の中央まで大体に姿を現しています。それだけではなく、わざわざ目立つアピールのようなことまで行っていますね。気づくことができたでしょうか。
実際にハーバード大学の実験では、ほとんどの人がゴリラに気づくことができなかったといいます。このように、人は身の回りのものを見ているようで、「認識」できていないことが多いのです。
つまり、注意力とは
- 「ある物事」に意識を向け続けるパワーのことを意味します。
この力が強ければ、強いほどミスも少なくなりますね。
ミスの原因は「雑念」
ハーバード大学の動画では、「パスに注意を向けさせる」ことで、ゴリラの存在に気づくことができないというミスを誘発させました。
つまり、大事なところでミスをしてしまう原因はシンプルで、「他のこと注意が向いている」ことが一番大きいです。
特に本番前などのプレッシャーのかかる状態では、「不安」や「心配事」といったパフォーマンスとは関係のないことを脳が考えやすくなります。
- ミスしたらどうしよう
- 緊張を抑えなくちゃ
- あいつバカだと思われるかも
このような「雑念」が浮かぶことで本来注意を向けなくてはならない行動に、集中できなくなります。例えば、プレゼンで「ハッキリした声でしゃべる」などの意識すべき点が頭の中から消え去ってしまうわけです。
その結果、不安に囚われた状態でプレゼンすることになり、案の定あがり倒してミスをしてしまうのです。
ワーキングメモリーとは?
本番で結果を出したいなら、集中力を鍛えないといけません。集中力がないと不安や恐怖に押しつぶされて、本来の力を発揮できなくなります。
これは、脳のワーキングメモリーが不安やネガティブな感情でいっぱいになっているためです。ワーキングメモリーとは、情報一時的に記憶しておく場所です。
人が情報を認識したとき、短期記憶に入ります。その中からこれは長期的に必要だなと判断したものだけ、長期記憶に入り記憶が定着するのです。
不安でメモリがいっぱいに
不安を感じているとき、短期記憶に「失敗したらどうしよう、嫌われるかもしれない、笑われるかもしれない」など、一度に多くの情報を入ってしまっているためにやるべきことに集中できなくなってしまうのです。
とつぜんセリフが飛んだり、右手と右足を同時に前にだして歩いたりしてしまいます。普段無意識にやっていることですら、できなくなるのです。
例えるなら両手に荷物を持っているのに、もう一つ持とうとしている状態。強引に持とうとすると口にくわえたり、脇に挟んだりしないといけなくて、どうしても不自然になります。これと同じ現象が起きているのです。
大事なところでミスしない方法
感情を受け入れる
感情や思考がコントロールできないなら、雑念が浮かび放題なので注意力なんか上がらないのでは?と思ってしまいがちですが、方法はあります。
- それは、「感情を受け入れる」ことです。
緊張や不安といった感情は、300万年前から存在していて人間のDNAにキッカリと刻みこまれたもの。いくら頭で「緊張を止めるぞ!」と思っても、そううまくはいきません。
考えないようにしようと思えば思うほど、逆に考えてしまう「シロクマのリバウンド効果」が心理学には存在します。つまり、思考や感情は自分ではコントロールできないのです。
客観的にオープンに観察する
そこで、強引に思考や感情を抑えるよりも受け入れることが効果的なのです。受け入れるとは、緊張が表れた時に、強引に抑えこもうとするのではなく、
「心臓がドキドキしている感覚」
「肩が上がる様子」
などを評価判断せずに客観的に緊張を観察するのです。緊張したらダメだ!と思う代わりに「いま緊張しているんだな」と認めることで、緊張へのこだわりが減り、結果的に緊張が和らいでいくのです。
ステップとしては以下のようになります。
1.あぁ!!、怖い、緊張する!!!(自動思考)
2.おっと、今自分は緊張しているぞ(気づき)
3.自分の状態はどうなっている? 呼吸が荒くなっているな・・・
4.緊張しているから、いつも以上にゆっくり話そう
このように、本当に大事なところに意識を集中させることで無駄なミス防ぐことができます。
関連記事:
マインドフルネスとアクセプタンスの違いとは?
ジャーナリングをする
先ほどワーキングメモリがいっぱいになることで、単純なミスが増えることをお伝えしました。このワーキングメモリの容量を減らすための技術がジャーナリングです。
ジャーナリングとは、
- ただ、紙に今感じていることをひたすら、書き出す
という方法です。
不安や本番前にの緊張であれば5分でも効果があることがわかっています。このライティングによって、ワーキングメモリーに空きができ、正常に今の状況を認識できるようになるのです。
まとめ
まとめると、大事な瞬間でのミスを防ぐためには、注意力を向ける力が重要です。注意力はある物事に意識を向け続けるパワーであり、集中力が足りないとミスが増えます。ワーキングメモリーが不安やネガティブな感情でいっぱいになると、本来の力を発揮できなくなります。
感情を受け入れ、客観的に観察することで緊張や不安を和らげ、プレゼンなどの大事な瞬間でのミスを減少させることができます。ジャーナリングもワーキングメモリーの容量を減らす効果があり、積極的に取り入れることが重要です。