マインドワンダリングとADHDの関係性と対策

ADHD
本記事でわかること

・マインドワンダリングとADHDの関係
・マインドワンダリングの2つの種類
・思考を観察する、修正することで対策する

ADHD傾向が強い場合、社会での生きづらさも感じてしまうケースが多いです。そこで、少しでもADHDの欠点を和らげるべく、様々な対策が講じられています。

今回はその中でも、ADHDと関連があるとされるマインドワンダリングの視点から解説していきます。

マインドワンダリングとは?

マインドワンダリングとは、以下の意味があります。

 

  • 目の前の物事から離れて、思考や注意が自由にさまよう心の状態。

 

日常の50%はマインドワンダリングの状態にあるといわれており、時には創造性や問題解決に繋がることありますが、注意力が分散するため、タスクの遂行を妨げたり集中できなくなったりするのが懸念点。

その他、不安や抑うつの増加などメンタルヘルスにとっても悪影響があります。

マインドワンダリングについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

マインドワンダリングとは?対策や止める方法・マインドフルネスとの関係を解説

マインドワンダリングの2つの種類

マインドワンダリングには以下の2つのタイプがあります。

・意図的マインドワンダリング
意図的マインドワンダリングは、目の前のことと関係ない思考を意識的に行うマインドワンダリングです。

例えば、車の運転中にプロジェクトの企画を考えるなどが挙げられます。このような意図的マインドワンダリングは、問題解決や創造的なアイデアの発想にプラスに働く可能性があります。

・自発的マインドワンダリング
自発的マインドワンダリングは、意図的なコントロールが難しい思考の流れのことを指します。タスクに集中するべき状況で思考が勝手にさまよってしまう現象です。

例えば、人の話を聞く際にうわの空になってしまって、内容を理解するのが難しくなる場合などがこれに当たります。

自発的マインドワンダリングは、タスクへの注意散漫や集中力の低下をもたらすため、効率的な作業や学習に支障をきたす可能性があります。

脳

ワンダリングとADHDの関係性

それでは、マインドワンダリングがADHDに関連する理由を見ていきましょう。

Bozhilovaら(2018)の記事によれば、マインドワンダリングは多くの研究によって、ADHDに関連していることが報告されています。

ADHDとマインドワンダリングの関連
  • 高いレベルの小児ADHD症状のあるグループは、低いレベルの小児ADHD症状を報告した群よりも、マインドワンダリングが多かった。( Shaw, Giambra.1993)。
  • マインドワンダリング傾向を測定する「MW 意図的および自発的スケール(MW Deliberate and Spontaneous scales)」を使った研究では、ADHD と診断されたグループは、意図的マインドワンダリングよりも自発的マインドワンダリングが多いことがわかった。 ( Seli et al.2015 )。また自発的マインドワンダリングがADHD症状の重症度と有意に相関していることを示した。
  • 同じくマインドワンダリング傾向を測定する「過度なマインドワンダリングスケール (Mind Excessively Wandering Scale)」では、ADHD におけるマインドワンダリング の 3 つの特徴をとらえている。それは、①思考が常に動き続けること、②思考が 1 つのトピックから別のトピックへと飛び交うこと、③同時に複数の思考であること。(Mowlem et al.2016)

このように、ADHDとマインドワンダリングには関係があります。心がうわの空になることで、不注意が起きたり、ミスに繋がったり、衝動性が高まってしまうのです。

マインドワンダリングの対策

それでは、ADHD傾向を和らげるマインドワンダリンの対策をご紹介します。

マインドフルネスを実践する

マインドフルネスは今ここを観察する実践です。過去や未来に思考がさまよってしまう状態に気づき、今ここに注意を戻していきます。

その結果、マインドワンダリングが少なくなり、集中力や注意力も高まっていきます。

マインドフルネスというと、座って瞑想するイメージがあるかもしれませんが、今ここに注意を向ける・観察することが瞑想です。

静坐瞑想

はじめは日常生活で行っている活動を、マインドフルに行ってみるところからスタートすると継続しやすいでしょう。マインドフルネスはすぐに効果は得られづらいですが、続けることで徐々にマインドワンダリングが少なくなっていきます。

関連記事:
マインドフルネス瞑想が続かない…継続・習慣化の5つのコツ

認知行動療法(CBT)

マインドワンダリングは感情的になっている時に起こることが多いです。そのため、いかに論理的に現実的に考えられるかが大切になります。

例えば、

  • ミスをしたあとに仕事に集中できなくなる
  • 好きな人にフラれたら放心状態になる
  • 大切なスポーツの試合で負けてしまった

このような、場合は強い感情に苛まれます。すると、目の前のことに集中できなくなり、マインドワンダリングが起こりやすくなるのです。

そこで、取り入れたいのが認知行動療法(CBT)です。認知行動療法は、偏った思考をフラットな思考に修正し、必要な行動を取る心理療法になります。先ほどの例を用いると、

  • ミスをした自分はダメ人間だ…⇒ミスは自分の成長に繋がることもある
  • 好きな人にフラれた自分には価値がない…⇒告白できたこと自体褒められることだ
  • 試合で負けてしまった自分は才能がない…⇒相手との実力差があっただけで、才能がないわけでない

などと思考を修正していくと、強い感情も和らいでいきます。その結果、マインドワンダリングも起こりにくくなります。

マインドフルネス認知療法(MBCT)

マインドフルネス瞑想とCBTを組み合わせた方法は、「マインドフルネス認知療法(MBCT)」と呼ばれます。

MBCTでは、特定の思考を修正する代わりに、思考や感情をそのままにして受け入れることに重点を置きます。思考の内容よりも、思考が現れるプロセスに目を向けていきます。

 

  • ミスをした自分はダメ人間だ…⇒不安感があるな、ダメ人間だと思っているな
  • 好きな人にフラれた自分には価値がない…⇒怒りがあるな、価値がないと思っているな
  • 試合で負けてしまった自分は才能がない…⇒悔しい気持ちがあるな、才能がないと思っているな

 

など思考や感情をそのまま観察していきます。このように観察することで、客観的に思考を観ることにつながり、感情に流されずにいることができます。

とはいえ、こちらもマインドフルネスの実践なため時間のかかる方法になります。

そのため、応急処置としてCBTを取り入れて、思考を受け止めつつ、気づきをもって修正していくやり方も実践すると良いでしょう。

まとめ

マインドワンダリングは、日常生活において我々の思考の一部として深く関わっています。しかし、その影響が特にADHDといった注意力の問題を抱える人々にどのように及ぶのかが注目されています。

研究によれば、高いレベルの小児ADHD症状を持つグループは、低いレベルの症状を持つグループよりもマインドワンダリングが多い傾向があります。また、自発的なマインドワンダリングが、ADHDの症状と関連していることが示されています。

マインドワンダリングには認知療法やマインドフルネスを取り入れることで対策する方法が存在します。これらを組み合わせて、ADHDの症状を和らげるための手段を見つけることが重要です。

ADHD患者やその支援者にとって、マインドワンダリングとの向き合い方は、より質の高い生活を送るための鍵となるかもしれません。

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マインドフルネス実践者/Webライター(公認心理師運営サイトのライター)

幼稚園から小学校4年まで学校では一言も話せない状態を経験。その後15年間、対人不安、強迫観念などの症状に悩まされる。マインドフルネスと出会い、これらの症状とうまく付き合えるように。現在では、マインドフルネスの発信をしつつ、原始仏教の実践にも取り組んでいる。※仏教は超初心者です
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