マインドフルネスはやり方や人によっては、危険性をともなったり逆効果となったりする場合があります。
そのため、自分の状況や正しい実践方法を知る事が大切です。
今回はマインドフルネスがやばい!危険!といわれる理由を解説しつつ、やってはいけない人の特徴や安全に実践するポイントを解説していきます。
Contents
マインドフルネスはやばい・危険といわれる理由
まずはマインドフルネスはやばい・危険といわれる背景から見ていきましょう。
禅病・魔鏡などの影響
マインドフルネスは、一見すると心の健康を促進する手段として注目を集めていますが、その実態には危険が潜んでいるとの指摘があります。
禅病
禅の修行を通じて、精神的または肉体的に異常をきたす現象を指します。これは、過度な座禅や瞑想によるストレスや心の葛藤が原因となることがあります。
不安感の増大
幻覚や幻聴
集中力の低下
パニック発作
禅病は、過度な修行や瞑想によって引き起こされる心理的・生理的な不調です。特に、初心者や無理な修行を続ける人が陥りやすいとされています。
禅の本質を見失い、自己や周囲との関係が崩れることもあります。このため、適切な指導のもとでバランスを保ちながら修行することが重要です。
魔境
禅や瞑想の過程で体験する、現実と非現実が交錯するような錯覚や幻覚の状態を指します。これも修行中に訪れる一種の心理的現象です。
悟ったと勘違いする
幻聴や幻覚
身体感覚の異常
恐怖や不安の増大
魔境は、瞑想や禅の修行を続けるなかで、一時的に現れる幻覚や錯覚の状態です。修行者が自己の内面に深く入り込みすぎた結果として現れることがあります。
これらの現象は一時的なものであり、適切な指導のもとで修行を続けることで克服できるとされています。正しい知識と指導を持つことが、魔境を乗り越える鍵となります。
パニック障害・うつ病・PTSDなどの再発
マインドフルネスがやばいとされる理由の一つに、精神的な病状の悪化が挙げられます。特に、過去のトラウマやストレスを抱える個人にとって、マインドフルネスが逆効果となることがあります。
過去の出来事に意識を向けることで、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が悪化することが報告されています。
同様に、うつ病やパニック障害を抱える人々も、深層心理へのアクセスが逆効果となり、症状の悪化が見られることがあります。
このように、マインドフルネスは全ての人に適しているわけではなく、個々の心理的な状態や過去の経験によって異なるため注意が必要です。
モチベーションや意欲の低下
さらに、マインドフルネスがやばいと言われる理由として、モチベーションや意欲の低下が挙げられます。
一部の人は、マインドフルネスの実践によって、現実の課題や目標に対する興味やエネルギーが低下する傾向があると指摘しています。
この現象は、「今ここ」に過剰に集中することが、将来の計画に対するモチベーションを損なう可能性があることが分かっています。
しかし、害のないやる気を持つことで、この問題はある程度解決することができます。
マインドフルネスとモチベーションのつながりについて詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
マインドフルネスでやる気・モチベーションは下がる?【やる気の正体】
危険性の高いマインドフルネス実践
では、危険性の高いマインドフルネスの実践方法はあるのでしょうか。詳しく解説していきます。
道徳心のないマインドフルネスはサイコパスを産む
マインドフルネスは、目の前の体験を評価・判断せずに観察すること。
そのため、恐怖心・不安感など感情に流されにくくなります。
しかし、このとき道徳心や慈悲がないと「思いやり」の気持ちが薄れ、冷徹な判断をしてしまう恐れがあります。
自分の利益・非社会的な興味のために、他人の犠牲をいとわない残酷な人間となってしまう可能性も。
実際に個人主義的な人がマインドフルネスをすると、ボランティアへの参加に消極的になることが研究で示唆されています[1]。
神秘体験を求めるマインドフルネスは危険
瞑想が深まると、光が見えたり、絶対的な存在とつながったよう感覚になったりします。
こうした神秘体験はサマーディ(禅定)と呼ばれています。
サマーディは、この上ない幸福感を与えてくれる一方で、その体験に執着してしまったり、「私は悟った」と勘違いしてしまう欠点があったりします。
またサマーディが現れるような高い集中状態では、幻覚が見える可能性も。
そこで、神など念じるサマタ瞑想などを行うと、本当に神が見えたりして、「自分は神と一体になった」などと勘違いしてしまう恐れもあります。
一度この状態になると、自我が強くなり、傲慢な性格になってしまうことも懸念されています。
何かを信じ込ませたり、絶対的な存在を念じたりする瞑想は危険であると言えるでしょう。
現実逃避としてのマインドフルネスは危険
マインドフルネスでは不快であれ、快感であれ、今この瞬間の現実をあるがままに受け止めていきます。
一方で、不快な体験から逃れるために瞑想をすると、かえって苦しみが増してしまう可能性があるのです。
例えば、
・嫌な感情を避けるために瞑想する
・過去の辛い記憶を忘れるために瞑想する
などは現実逃避となってしまい、かえって嫌な感情や辛い記憶を強化してしまう恐れがあります。
臭い物にふたをするのが瞑想ではなく、どんな体験であっても「真っ向から直面する」のが本来のマインドフルネスなのです。
貪瞋痴(とんじんち)に繋がる効果を求めると逆効果に
これは先ほどの道徳心のないマインドフルネスはサイコパスを生むで話したポイントと類似しますが、マインドフルネスは目的がとても大切です。
とくに貪瞋痴(とんじんち…貪り、怒り、無知)から生じる目的などマインドフルネスを行うと、短期的に良い結果が出ても長期的には苦しみが増してしまいます。
例えば、
・仕事で成果を高めたい!(貪欲)
・ストレスを低減して気持ちよくなりたい!(貪欲)
・老けたくない!(怒り)
などの効果を求めて行うと、その効果は得られるかもしれませんが、精神的な悩み苦しみは強くなっていきます。
貪欲や怒りが増えると、
仕事で成果を上げる
⇒自分に追いついてきたライバルを疎ましく思う
快感を求めてストレス低減する
⇒不快な体験を受け入れられず、苦手な場面を避けようとする
老けたくない
⇒若さに執着して、老いる度に自己批判するようになる
といった状態に。
このように貪瞋痴の目的でマインドフルネスとは実践すると、悪影響が出てしまうのです。
マインドフルネスをやってはいけない人の特徴とは?
それでは、マインドフルネスをやってはいけない人の特徴を見ていきましょう。
1.精神疾患を抱えている人
マインドフルネスは精神疾患を抱えている人にとって、特に慎重なアプローチが求められる実践方法です。例えば、
- トラウマ
- うつ病
- パニック障害
- 解離
などこを抱えた方々は、日常生活が既に複雑であり、マインドフルネスの効果を得るには医師の指導が必要です。
自己判断に頼るのではなく、医師との相談を通じて適切なガイダンスを受けながら実践するようにしましょう。また症状が現状落ち着いている方も、再発したり病状が悪化したりする可能性があるため、注意が必要です。
マインドフルネスはリラックスや安心感をもたらす一方で、精神的な負担が大きい状態では、無理な力で自分をコントロールしようとすることが、かえってストレスを増加させることがあります。
マインドフルネスを実践する際には、感情や思考の変化に敏感になることも求められます。
これはトラウマやうつ病などの症状が表面化する可能性があるため、安定した状態を保ちながら進めることが大切です。
2.コンパッションの側面を知らない人
マインドフルネスはただの瞑想だけではなく、実践にはコンパッション(慈悲)の側面が必須。しかし、この側面を理解せずに取り組むと、思わぬリスクが生じる可能性があります。
例えば、先ほど紹介したエゴが強調され、社会的な行動が減少するなど。他者への理解や思いやりが不足すると、孤立感や人間関係の悪化につながりかねません。
マインドフルネスは、ただ観察するだけではなく、思いやりの気持ちも育てるものであり、この点を無視すると本来の目的が逸れる可能性があるのです。
マインドフルネスを通じて自分を知り、同時に他者に対しても理解を深めることが、より豊かな人間関係を築く一助となります。
3.マインドフルネスのやり方を理解していない人
マインドフルネスは抽象的な概念であり、まったく知識がないまま実践すると、効果が得られないだけでなく、逆にストレスを増大させることがあります。
このような場合、まず最初にマインドフルネスが何を指すのかを理解することが大切です。例えば、マインドフルネスをただ集中することだと考えると、集中できない自分を批判したり、雑念を押しのけようとしてしまうかもしれません。
しかし、本来のマインドフルネスは「観察」することであり、「いい悪い」という評価をせずにあるがままに受け入れる姿勢が大切です。またそのほかにも、
- 優しさを持つ
- 好奇心を持つ
- 無理をしない
- 初心を忘れない
- 怒り(嫌な気持ち)を持たない
など抑えるべきポイントが多くあります。
マインドフルネスは簡単には理解できないかもしれませんが、その本質を知ることで、より効果的に実践できるようになります。ただし、一度理解しただけではなく、継続的に学び、実践することが重要です。
マインドフルネスは正しい理解と実践によって初めてその効果が発揮されるため、根気よく取り組んでいくことが大切です。
4.瞑想への期待が強すぎる人
最後に、「瞑想への期待が強すぎる人」も要注意です。マインドフルネスは瞑想が一つの手段ではありますが、効果が即座に現れるものではありません。
焦ってしまうと、失望感や挫折感を生む可能性が高まります。また、目的へのこだわりが強すぎると欲が強くなり、かえって逆効果になってしまうかもしれません。
瞑想への期待が強いと、まるで魔法のような即効性を期待してしまいがちですが、マインドフルネスは時間をかけて丁寧に実践することで効果が発揮されるもの。
ゆっくりと自分のペースで進め、効果が実感できるようになるまでじっくりと取り組むことが大切です。
瞑想中はマインドフルネスによって得られる効果は、あくまでも副産物であると考えておきましょう。
危険性の少ないマインドフルネス実践のやり方
それでは、どのようにマインドフルネスを行えば危険性を回避しつつ、安全に実践できるのでしょうか。具体的なポイントをいくつか見ていきましょう。
グラウンディングを行う
マインドフルネスの実践において、危険性を軽減するための方法として、「グラウンディング」が挙げられます。グラウンディングは、
「今、ここ」にある”地に足のついた感覚”
を指す言葉です。今ここの感覚に注意を向けることで心の安心感を取り戻します。
WHO(2020)の『Doing What Matters in Time of Stress: An Illustrated Guide』[2]でも、グラウンディングは感情の嵐を和らげ、落ち着きを取り戻すことができるテクニックと紹介されています。
特に、マインドフルネスの実践では、強い不安感やトラウマのフラッシュバックが懸念されます。そこで、まずは心の安定を保ちつつ、今この瞬間の体験と向き合っていくのです。
より深く知りたい方は下記をご覧ください。
マインドフルネスの「グラウンディング」とは?意味や効果・やり方を解説
セーフ・プレイス・ワーク
セーフプレイスワークは、不安や神経症に悩む方々にとって非常に有効なアプローチです。この方法の具体的な手順を詳しく見ていきましょう。
①落ち着いた環境を用意する
まず最初に、落ち着いた環境を用意します。静かで安心感のある場所で、ゆったりと座り、目を閉じます。外部の刺激を遮断し、内面を意識を向けることが大切です。
②安心できる場所や状況をイメージする
次に、「自分にとって心から安心できる場所や状況はどのようなものか?」と考えます。これは過去に訪れた場所、住んでいた場所、動画で見かけた風景、未来に訪れたい場所などが思い浮かぶ可能性があります。
思い描いた場所を具体的に観察し、細部にわたる部分に意識を向けます。景色や建物の形状、使われている素材などをできるだけ詳細に想像します。
③その場所で感じる感覚に注意を向ける
また、その場所での感じる音や静寂、肌の感覚にも心を傾けます。これにより、五感を通じて安心感を感じることができます。
④イメージに点数をつける
最後に、思い描いたイメージに点数をつけます。0点から100点のスケールで、「全く安心感がない」から「心から安心感を感じた」までを評価します。
このスコアが80点以上になるまで、繰り返し実践してみましょう。
重要なのは、イメージを積極的に思い描こうとするのではなく、自然な流れで湧き上がるのを待つことです。無理に作り上げず、自分の心に安心感が生まれるのをゆったりと受け入れましょう。
セーフプレイスは不安やネガティブな感情に対抗するための、心の拠り所となります。この手法を日常的に取り入れ、心の平穏を育んでいくことが大切です。
副作用のない目的を持つ
先ほど貪瞋痴でマインドフルネスを実践すると悪影響になるとお伝えしました。
一方で、貪欲・怒り・無知を手放す目的、または慈悲喜捨の目的で行う場合には、副作用はありません。例えば、
・自分や他人に貢献するために、仕事で○○な成果を納めたい
・不健康で自分や他人に迷惑をかけないために、ストレスを減らしたい
・感情に負けない心を作るために、健康的な生活を保つ
こうした目的で瞑想するのであれば、大きな問題にはならないでしょう。
しかし、上記の目的はあくまでも通過点であると考えておくことが大切です。
日本テーラワーダ仏教協会のスマナサーラ長老は、以下のような言葉を残しています。
商売繁盛という汚れた目的であったとしても、成功したければ「気づき」を実行しなくてはいけません。仕事だけではなく子育てでも、どんな目的でも同じです。
仏教では「それで止まるな、終わるな」ということを言っています。仕事が上手くいったとしても、死ぬまでそれをするわけではないでしょう。ある技術ではものすごく能力があったとしても、時代の流れでその職種が廃れてしまう場合もありますから。社会の移り変わりは速いのです。
ですから、いつでも「マインドフルネス(気づき)」という能力だけ身につけていれば、たとえ社会がどうのように変わっても生き延びる方法があります。
そういうことで、「マインドフルネス」とは本当はこころを清らかにする方法です。そこを忘れてはならないと思います。
つまり、最終的な目的は、
「こころを清らかにすること」
「自我の錯覚を破ること」
であると理解すると、長期的にも良い結果を得られます。
そして、瞑想中は目的は意識せず、あくまでも効果は副産物であるとして、すべて手放して今ここに意識を向けることが大切です。
まとめ
このようにマインドフルネス危険性があり、人によっては医師の指導に従って実践する必要があります。
中途半端な理解でマインドフルネスを始めると、効果が出るまで時間がかかる可能性が大。なのでまずは、さまざまな側面からマインドフルネスを学ぶことが大切です。
実践も重要ですが、理論を知らなければ誤った実践になるため注意しましょう。
・やってはいけない人の特徴
・瞑想の危険性
・安全のマインドフルネスの実践方法