マインドフルネスでは、アクセプタンス(受容)の概念が重要視されています。
しかし、それぞれ意味がかぶる部分もあり、明確な違いがわからないという方も多いでしょう。
そこで、今回はマインドフルネスとアクセプタンスについて科学と仏教の視点から、わかりやすく解説をしていきます。
Contents
マインフルネスのアクセプタンスの違い
マインドフルネスの意味
ジョン・カバット・ジン(1994)[1]は、マインドフルネスを以下のように定義しています。
今ここでの経験に評価や判断を加えることなく能動的に注意を向けること
つまり、過去や未来の心配するのではなく、今ここの瞬間に集中し、観察することがマインドフルネスです。
アクセプタンスの意味
スティーブン・ヘイズら(2014)[2]によれば、アクセプタンスは以下のように定義されています。
アクセプタンスとは、刻々と変化していく体験に対して、意識的に開かれていて、受容的で、
柔軟な、そして批判的ではない姿勢を自発的にとることである
これは過去の経験や現在の状況に対して非難や否定せず、ありのままを受け入れることを意味します。アクセプタンスは、苦しみや困難な状況に対して抵抗するのではなく、変化や不確実性を受け入れることです。
つまり、マインドフルネスは今この瞬間の意識のあり方であり、アクセプタンスは変化や困難に対するオープンな態度を指しています。
どちらも評価判断しない部分では同じですが、アクセプタンスは批判的にならないことを強調しています。
無常とアクセプタンス
アクセプタンスはマインドフルネスよりも、変化を受容するという意味合いが強いです。
無常とは?
仏教の教えにおいて、変化は「無常(むじょう)」と呼ばれています。無常とは、生命や世界の変化を指します。一切のものは絶え間なく変化し、永遠のものは存在しないと仏教では説かれています。
困難や喜び、すべての瞬間が一時的であること意味し、この無常を理解することで執着から解放されます。
アクセプタンスで無常を理解する
思考や感情を無理になくそうとせずに受け入れることで、それらは勝手に薄れていきます。
思考や感情を否定するのではなく、アクセプタンスを通して受け容れ、心を落ち着かせることで、観察力が高まります。
マインドフルネスで、今ここ洞察することで、一切は変化して過ぎ去っていくものであると分かっていくのです。
アクセプタンスのやり方
マインドフルネス瞑想や慈悲の瞑想をする
マインドフルネス瞑想は、現在の瞬間に注意を集中させ観察する方法です。心の中の感情や思考を静かに観察し、それらに対していい悪いといった判断をせずに受け入れていきます。
マインドフルネスは今ここを評価判断せずに観察する実践であり、続けていくことで少しずつアクセプタンスの感覚が掴めるようになっていきます。
慈悲の瞑想は「自分を含めたすべての生き物の幸福を願う瞑想」です。生きる上で避けられない苦しみを理解し、一切の生き物に慈悲の気持ちを持つことで、アクセプタンスの養われていきます。
それぞれの瞑想を詳しく知りたい方は、下記のコラムをご覧ください。
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知足を知る
知足とは「必要」で満足することを意味します。たとえば、喉が渇いたら必要なだけ水を飲む、寒ければ必要な衣服を身に着けるといった行動が挙げられます。
私たちは、
- これがあれば…
- あれがあれば…
という風に、今ここにないものを求めて、不満足の気持ちで生きています。仏教では不満足のことを「苦(ドゥッカ)」と言います。
例えば、貧しい地域に住んでいる人からすれば、今日本に住んでいる私たちは、天国のような環境だと思うでしょう。何不自由なく生活できているだけで、十分恵まれているのです。
しかし、それでも私たちは満足できず、夢や希望を追いかけて、恵まれていることに気づくことができません。こうした状態は仏教では、苦しみであると説かれています。
必要最低限で生きることで、
「多くを望まなくても、幸せに生きれる」
と、無駄な欲望を手放すことができるようになります。ただ、いきなり全ての欲を手放そうとすると大きな苦しみが伴います。
すると逆にストレスが溜まって、アクセプタンスどころではなくなってしまうでしょう。
そのため、まずは「常識的な欲(やったあとに後悔しない程度の欲)」「自他の役に立つ意欲」「息抜き程度の娯楽」などにとどめておき、アクセプタンスの力を少しずつ伸ばしていくことが大切です。
メタファー
マインドフルネス心理療法の1つであるACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、アクセプタンスのための様々なテクニックが紹介されています。
その中でも、もっとも手軽な方法として、メタファー(例え)を読むというものがあります。ここでは、アクセプタンスに役立つメタファーをいくつか紹介していきます。
バスのメタファー
今、あなたはバスの運転手として、目的地までバスを運転する使命を担っています。この状況で、後部の席から酔っ払いが野次を飛ばしてくると仮定しましょう。
この瞬間、誰もがイライラし、不快な気分に陥るでしょう。
しかし、ACTの視点では、怒りに飲まれずに冷静に自分を観察します。「怒るのは仕方がないことだ…」と感情を受け入れ、酔っ払いとの論争に巻き込まれないように工夫します。
程よく酔っ払いに注意を払い、騒ぎが収まらない場合は「仕方がない」と割り切り、目的地に向かって運転を続けます。なぜなら、「目的地へ車を走らせることは、運転手である自分にとって価値のある行動」だからです。
このように、ACTでは感情との戦いではなく、感情が湧いたときにも自分にとって大切な目標に焦点を当てるスタンスがあります。
チェスボードのメタファー
ここにはチェスボードがあり、その上には白と黒の駒が配置されています。それぞれの駒を以下のように例えてみましょう。
黒い駒⇒嫌な思考や感情
白い駒⇒良い思考や感情
もし、あなたが黒い駒に嫌悪感を抱くと、白い駒の視点から黒い駒と戦い続けることになります。しかしながら、必ずしも打ち勝てるわけではありません。
一方で、チェスボードの視点に立って、客観的に黒い駒と白い駒の動きを観察するとどうでしょうか。どちらにも偏らず、事態を冷静に把握できるようになります。
流れる葉っぱのメタファー
目を閉じ、葉っぱが水面に浮かぶ様子を想像します。その葉っぱが静かな川の流れに揺れる様子をイメージします。 自分の心の中に浮かぶ感情や思考を、葉っぱのように見つめます。
一つ一つが葉っぱとして水面を漂っていると考えます。感情や思考が湧いてきても、抵抗せずに受け入れます。
葉っぱが自然な流れに従って動くように、感情や思考もただ通り過ぎるものとして受け入れます。
拡張(エキスパンション)
拡張のテクニックも、ACTで用いられる方法です。拡張とは、心の中に「感情や思考」の居場所を作るテクニックです。具体的には以下のステップで行います。
ステップ 1: 観察する
ステップ 2: 息を吹きこむ
ステップ 3: 居場所をつくる
ステップ 4: 存在を許す
まずは感情や思考を観察していきます。次に、ゆっくり呼吸をします。この時吸う息よりを吐く息を長くしましょう。落ち着いてきたら、息は吐く時に風船を膨らませるイメージで、心の中に広大なスペースが広がっていくの想像します。
このスペースは、部屋でもいいですし、草原でもいいですし、宇宙でも構いません。個人的には、広ければ広いほど、思考や感情を受け入やすいと感じるので、宇宙をイメージすることが多いです。
最後の思考や感情が、そのスペースに出たり入ったりするのを許していきます。
拡張について下記の記事で詳しく解説していますので、興味がある方は参考にしてみてください。
まとめ
マインドフルネスとアクセプタンス、両者は過去や未来にとらわれず、現在の瞬間に集中し変化を受け入れることを教えています。
なかでも、アクセプタンスは変化や困難に対して、抵抗せずにオープンな態度を持つことが強調されています。
マインドフルネス瞑想や知足、メタファーを通じてアクセプタンスを育むことで少しずつ心の許容範囲が広くなっていきますよ。
・マインドフルネスとアクセプタンスの違い
・アクセプタンスと無常
・アクセプタンスを育む方法